夏物語 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

ー句ー

炎天に燃えて堕ちゆくあいの星

ー夏物語ー

君と暮らしし かの町は
丁度祭りの屋台で買った
鼈甲色した飴細工
つがいの兎の形した
ゆふぐれ色の思い出の中

君と暮らしたあの頃は
思い出なんかにしないと言って
いつも同じ帰り道
喧嘩もしたし
笑ったし

いい事ばかりは無かったけれど
悪い事ばかりも無かったし
ふたりして 雨の日 晴れの日 曇りの日
花咲くやうに生きていた

目を閉じれば 遠いむかし
あれからどれだけ経ったのでしょう

思い出になんかしないと言った
言葉が思い出になったけれど
君のやうなぬくもりに
二度とは巡り逢ふこともない

ねぇ君は
ぬくもりを 今は見つけられたかな?

あれからわたしは お祭りに
すっかり行かなくなっちゃって
夕焼け雲をぼんやりと
君と並んで見るやうなことも
すっかり無くなって
苦手なことが少しだけ 増えた女に
なりました

あれはやっぱり 愛だったんだね
君を愛していたんだね
たとえ世界を明日無くしても
君を失うことだけが
あの日のわたしは
怖かったのよ…

ーうたー

飛び跳ねしつがいの兎飴細工
ずっと飾って眺めていたね

あのつがいきっと天へと舞い上がり
月に暮らしていると信じる

追憶の鼈甲色したゆふぐれは
進まぬ今の吾の背を押す

来世きっときっと君を見つけて
誓いする再び離れることなかりけり

{7078730E-700E-4692-B08F-2987F429090E:01}


すてきな団扇を見つけました。必要ないのに絵柄に迷ってしまい、二枚買ってしまいました。共する人の無い二枚の団扇はみなさまと共に夏の短夜を過ごそうと思います。今日の詞はこの団扇が語ってくれた詩です。(^ ^)

あなたもこの夏 素敵な人 物と出会えますよう…

鳴兎    拝