舟人 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

ー舟人ー

春風の吹くや吹かぬの日を数え
君の居ませぬこの街に
彼岸のさくら待つけれど
散り征く花 惜し
去る鳥も 惜し

ほつれ毛を
かき揚げ痩せた指先に
留まる光の鈍ささえ
せっかち過ぎるこの身の性質を
思い知らされし窓辺から

人さまの着る春衣艶めいて
空気軽きと思う度
鏡に映る身の細り
背に食い込みし 病院着

生きて 生きて
枯れ果てるまで
されば
たれかが褒めようか…

いえいえ
たれも褒めはせぬ
生き抜くことの当然は
等しく同じうつそみの
昇り下りの舟の如く
漕ぎながら
すれ違い
袖振りて 会釈して
言葉ひとつも交わすこと無く
先ずは来世で逢いましょう…

御機嫌よう さよならと
言わない代わりに会釈して…

ーうたー
残る月まるで命の余韻(よういん)を
慈しむごとゆらりゆらりと

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