しまなみ海道 短歌 海に舞う雪 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

しまなみ海道・・・正式には西瀬戸自動車道(にしせとじどうしゃどう)は、本州四国連絡道路の尾道・今治ルートを成す道路である。



上の標識を懐かしく思い出している

西瀬戸尾道ICを起点とし、向島・因島・生口島・大三島・伯方島・大島などを経て愛媛県今治市の今治ICに至る。ここに至るまでいくつもの橋を渡ることになる

ウサギは 尾道を後にして しまなみへ向かう・・・九州という故郷を離れてから ここに来たいと思いつつ ついぞ来ることの叶わなかった場所・・・またひとつ叶えた とても嬉しい

ほんとうは 夏の瀬戸内海が見たかったんだけど・・・この日は 尾道を出た朝から雪だった
寒い寒い 瀬戸内だ・・・



多々羅大橋 雪 雪 雪・・・海に舞う雪・・・

周りの山々は 白く雪化粧・・・昨夜(尾道に宿泊した夜)はかなり降ったのかもしれない
この辺りのパーキングエリアでも 人影はまばら・・・
寒いせいかな?雪のせいかな?

それでも カラスは 先を指し示すように わたしの前を歩いていく 止まっては 黒曜石のような瞳で わたしの様子を伺っている



こんな しまなみ海道も珍しいんだよ・・・と 地元の方は話して下さった
「お客さんのために 雪のおしろいして待ってくれたんじゃないか?」って・・・
それならば とっても嬉しいことだ・・・

この島々を巡ってしまえば 母がこよなく愛するタオルの名産地 今治に到着の予定 母は今治タオル以外は タオルじゃないとまで言い切るほど 今治タオルのファンである 好きが高じて今治に住むのが夢だった そして亡父が参拝させて頂いた 彼の石鎚山があるではないか

そんな意味で わたしの中で この土地は 遠いような近いような 不思議な土地でもある
なにが 起きるのか いえ 何も起きないのか・・・わたしを突き動かすこの雪の道を 真っ直ぐに眺めた・・・ 

先を指すカラスは まるで東征に出かける神武天皇の遣いのカラスのようでもある
(鷹とも 鳶とも諸説ありますが・・・翼あるものは 神意を感じます)

降る雪は白には見えず海に舞ゐ 海を映して蒼くあるかな

オニキスの瞳を持ちて飛ぶ鳥に 道示されて我寒からず

島々を繋ぐ架け橋渡りつつ 無言になりぬその景色ゆえ

言葉とは多くは要らぬことと知る 悲哀も美をも同じ等しさ

我が胸の高鳴り抑え草枕 見聞きしてなを 深く知りたし

しまなみは 繋ぐ 架けるを命とぞ 愛のまことを穏やかに説く


知らない町で 出会う人の 懐かしい笑顔に触れ
わたしは 放浪が好きであることを知る

わたしのことを知らない人の
わたしへの不審もぞんざいも
わたしにとっては 安心だ

わたしは 知らないその町で
もうひとりの知らないわたしに出逢っている

ほんとうは 弱いわたし
ほんとうは 寂しがりなわたし

その町の小さな食堂で
美味しい食事を用意してくれた人々に
その町で一夜の宿を貸してくれた人々に
迷った道を親切に教えてくれた人々に

ありがとう・・・ありがとう・・・

みんなが居たから・・・
明日は また 歩き出し
明日をめざして わたしは 向かう

そこに留まることは
ありません・・・

生きうる限り 旅を続けます・・・

ひとりでは無いということを そっと心に刻みつけ
架け橋が しまなみの流動的な 心の海の荒波の上
しっかり 繋いでいる そのように・・・

わたしも あなたと そして誰かと 確かにどこかで繋がっている


  鳴兎   拝

・・・・しまなみ海道 それから・・・続く