ー句ー
あはければ帰結見ぬ間に
溶けし雪
ー千年の苦痛ー
月の野原に 雪が降る時
見せかけの 仮面が崩れ去る
横顔しか見せない月の野原も
本心を明かさない人の心も
重い扉は開かれて征く
言わぬことが優しさなどと
勘違いした愚か事
偽られることの方が
ずっと後まで傷が深い
あなたは…
ほんとうに 愛してくれていたろうか?
あなたは…
ただの気の迷いではなかったか?
問うても詮無い応えを抱いて
わたしの思いは
月の野原に降る雪となる
あなたの愛した月の野原に
涙のような淡雪となる
見えざる心と猜疑のまなこ
わたしは
偽りが大嫌い
大怪我を負う真実の方が
ずっとずっとましだもの
もの言わぬあなたに
無言で向き合い続ける苦痛は
きっと一千年に値いする
どうか…
あなた…
真実を教えて
そしてわたしを
解き放って…
わたしが月の青の野原で
凍てつく氷になる前に…
ーうたー
いつはりはいつか溶けざる
薄氷〈うすらい〉の
鈍き痛みに千年積もる