還る時 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの

ー句ー

若菜野は
衣手雪と芽生えるや

ー還る時ー

その日はとても寒い日で
どこを探しても 花は咲いていず

その朝なぜか鳥は鳴かずに
小枝で身を寄せ合っている

最期の時は
突然に訪れ
空は静かに青いまま
海と重なってゆくだろう

後悔や未練とは
語らう間もなく
わたしという
ひとつの魂は 肉体を離れて

白と黒のあわいへと
静かに溶けてゆくだろう

上の瞼と下の瞼が
永遠にひとつになるとき
わたしはきっと安らかだろう

たぶん
あなたは わたしの隣りで
手を取って誘うだろうから

さあ
ゆっくり 振り返り
君の過ごした星を御覧と…

そのときわたしは生まれて初めて
青い地球を愛するだろう
感じたことも無いくらいに
青い地球を愛するだろう

わたしに試練を与え続けた
淀み無い青を愛するだろう
永久に…

ーうたー

過ぎ去れば苦き暮らしも走馬灯
灯し見ゆれば
いとしかるべき