ー短歌 病巣ー
しはぶけばそびらに君が手当てする
そのたまゆらに幸はきはまる
熱の日に背骨を数ふ人の指
熱の日に背骨を数ふ人の指
吾が経脈のひふみよと開く
レントゲンの影の白さや病巣も
レントゲンの影の白さや病巣も
吾が血肉なら愛しくもある
傷つきし君が心の繊細を
傷つきし君が心の繊細を
吾が亡き後は誰ぞ綾織る
だれぞ知る君の開かぬ御心の
だれぞ知る君の開かぬ御心の
奥処に閉ざす寂しき小部屋
人はいさ吾は語らぬ笑みの下
人はいさ吾は語らぬ笑みの下
忍び音ならば清くありたし
いつの日も後ろ姿を見送りて
いつの日も後ろ姿を見送りて
残る我が身は絵にならなくに
熱の下君の名前を呼べもせで
熱の下君の名前を呼べもせで
空には月も浮かびえぬ夜
君の背を見るもかなはず東京の
駅改札を吾は流るる
病など口実にせし浅はかは
送るに辛き君を見ぬため
いつはりの笑み見抜かるる不器用さ
下手な道化と蔑まれおり
まだ熱の下がらぬ夜に降る雨は
そびらに寒く君はつれなく
