ーうたー
しきしまのまなこ涼しきますらをは社殿の似せ絵神々のごとく
(sikisimano manako suzusikimasurawowa
shadennonisee kamigamino gokotku)
ー出雲番外編 不思議なふたりー
出雲から帰って 数日経ったある日 わたしは職場で 使う文具の調達に少し大きめの文房具店に立ち寄った それは普段は立ち寄らない ある街の文具売り場だった 夕方だったが それほど混み合ってはいなくてほっとしながら・・・
数ある棚から こまごまと探し回るのはなかなか大変で わたしはすっかりその作業に没頭していた だから 周りを全く見ていなかったのだ ほんとうに不注意だった・・・
ひとつのコーナーを曲がるとき 二人連れの男性に 勢いよくぶつかってしまったのだ
大柄なひとりの男性の手から カラフルなサインペンと 数枚のサイン色紙がバサバサと落ちた わたしの提げた大きな仕事用鞄がぶつかったせいだ
わたしは慌てて
「ごめんなさい・・・失礼しました お怪我ありませんか?」
と小さく叫びながら 散らばったペンや 色紙を一緒に拾い始めた
「大丈夫 大丈夫 こっちこそ うっかりしてた 喋りながら歩いてたから・・・」
大柄の男の人は 豪快に笑っていた その後ろで やや細身の目鼻立ちの端正な青年が 静かに微笑みながら言う
「こいつはいつも こうなんだ 岩みたいだから そっちこそお怪我はありませんか?」
歯並びのよい口元を爽やかにほころばせて・・・まるで少女マンガじゃないか・・・などとわたしは思いながら それでも 曲がってしまったサイン色紙を買い取らせて貰えるように 彼らに申し出た
彼らは 散々辞退したけれど それでもわたしは引き下がらないので 一枚だけ サイン色紙を買うということなら ということで やっと承諾してくれた
会計を済ませて 聞くとは無しに わたしは社交辞令と謝意を込めて
「立ち入ったことを伺いますが・・・どなたか 有名な方が来られるのですか?こんなに沢山のサイン色紙を・・・」
と購入したサイン色紙を 大柄な男性に手渡しながら わたしは微笑みながら聞いてみた・・・
すると 大柄の男性は 少し寂しそうな顔をして・・・
「こいつが 郷里の 出雲へ帰るというので・・・寄せ書きを・・・」と・・・
わたしは 視線を細身の男性の方へ移した 美しいきらきらとした瞳を輝かせながら 彼も小さくさみしげに頷いていた
「あ・・・わたし 先日 出雲へお邪魔させて頂いたんです ほんとうにとてもいいところでした もう一度是非お邪魔したいです・・・」
わたしが とんちんかんにそう言うと 細身の男性が 美しく真面目な笑顔で意外なことを口走った
「運命ですね・・・あなたとここで逢えたのも・・・出雲はいい所ですよ・・・ほんとうにね・・・ですからまた 遊びにいらっしゃい・・・あなたとともについてきたものをわたしは連れて帰りますから・・・また 逢いましょう あちらでね・・・」
そういうとふたりの男性は ぶつかったわたしなどに丁寧に礼を述べて笑いながら 風のように売り場を去って行ってしまった
あっけに取られたわたしは 暫く売り場にぼんやりと佇んでいた
細身の彼が何を言わんとしていたのか 単なる社交辞令だったのか それは分からないけれど 大柄な男の人といい 細身の男性といい どこかの社殿でみたような気がするのだけれど どうしても思いだせない・・・
風のように現れて 涼やかな風のように 過ぎていった二人は わたしに がんばれ!と言ってくれたようで・・・
あの旅以降 わたしは出雲がキーワードになっている・・・
それにしても わたしとともに 出雲からついてきてしまったもの それはいったいなんだったのだろうか?それはもう 細身の凛々しい彼と共に 出雲へ着いただろうか?
「見上げてごらん夜の星を」本田美奈子
おやすみなさい そして おはようございます