化身 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

鳴きウサギ|Nakiusagi
静かに鳴く小さな声のウサギ。
青薔薇の咲く場所で、和歌・童話・詩・願いを綴っています。
2009年より、呟きのように日々を記録。
noteでは「舞香亭幻想香炉」という物語の香りを、そっと灯しています。

https://note.com/nakiusagi44

ーうたー

文字ひとつ未だにまほろさまやうて
幽玄の世を行きつ戻りつ
(mojihitotu imadani mahoro smayoute
yugennoyowo ikitu modoritu)
ー化身ー

あなたの傍に添えないわたし
見えないだけだと思って欲しい

わたしは いつも傍にいる
あなたの周りを飛んでいる

思い焦がれる愛などは
言葉にせずとも
あなたならば わかるはず・・・

貝なる耳を欹てて 聞こえてくるのは
溢れるばかりの 心を込めた古代文字

月の雫の毀れるような
波の煌きを拾うような

まことの愛は 大きな声で語られぬ
今の言葉で呼びかけられぬ

いつも幽かな 風のごとく
いつも妙なる 香りのごとく

金色に銀色に たまゆらの
色を示して すぐに消えてゆく
奇跡のしらべ・・・

あなたの前で一度だけ
水に飛び込むわたしの絹が
ふわりと 足元に落ちたとき

月の光を浴びた裸体が
蒼ざめて 翻り しぶきを上げて化身する
わたしは 魚に化身する

波紋を残して 泳ぐわたし 幽かな鱗を宙に浮かせて・・・

驚いたあなたの顔を 忘れてはいない 忘れられない

わたしは 水を得た藍の魚
ひらひらと ゆらゆらと
あなたが 落とした 銀の笛
あなたが 失くした 銀の心を

見つけてあげよう 水の底から・・・

あなたの傍に添えないわたし
見えないだけだと思って欲しい

わたしはいつも傍にいる
あなたの周りを泳いでいる

はるか深い水底から 古代文字を送り続ける
あなたへ届け あなたへ届け

永久に終わらぬ 長い恋文



「記憶の森」安全地帯 作詞 松井五郎 作曲 玉置浩二