夏の恋 純文学 「潮騒 」三島由紀夫 | 口遊〜鳴きウサギ〜

口遊〜鳴きウサギ〜

生きる為に 息をするのを忘れていた
わたしのまわりが 息をするには狭すぎる
野々草を摘んで 口遊みなが ゆっくり ゆっくり歩きたい
勝利者とは誰のこと?
居心地の悪いところに居たくはないの




「歌島は人口千四百、周囲一里に充たない小島である・・・」

これは有名な 三島由紀夫 潮騒 の冒頭です。

この時期になると わたしは潮騒の海の音と この小説が読みたくなる。

この舞台となった神島は 三島氏が 水産庁にお願いして探し出した 場所。
三重県鳥羽市沖合いの島です。

$まほろば





若く貧しく逞しい漁師の青年 新治と 島に戻ってきた 金持ちの娘で 海女である初江との
純粋で 激しく 清い恋愛小説で ギリシャ神話の「ダフニスとクロエ」が底本でプロットはそこから殆ど変えずに書いたと 彼自身が伝えています。

仮面の告白 金閣寺など ジャンル分けの難しい小説家ですが この潮騒は 特別に異彩を放つ作品・・・。

おまけにタイトル 潮騒は (万葉集)から 取られたものです。

「潮騒に伊良湖の島辺漕ぐ舟に 妹のるらむか 荒き島廻を」

・・・柿本人麻呂が 伊勢へ行かれた 持統天皇へ宛ててよんだうた

訳)ざわざわと波が騒いでる伊良湖岬のあたりを漕いでいく舟に あの人は乗っているのだろうか 島廻りは潮も荒いというのに・・・・

潮騒は 青春の激しい高鳴りにも似て 海と空と島と それぞれの色目の違う青が見事な背景をつくりあげており そこに青春という どうにも抗い難い 季節の激しさの青と見事に調和している。素直な目で 真っ直ぐ読んでいける小説です。

$まほろば



ただ わたしだけかしら・・・三島氏が 失われてゆく 文化と孤立した島を敢えて舞台としたのは また 穢れを知らぬ若き男女の 素直な恋と 貞淑さを感じるのに もう全て日本は失ってしまったのだよ・・・。と彼が呟いているように聞こえるのは・・・。

ギリシャ神話がプロットであったことを 注目すれば この潮騒は 日本のもはや神話的事象になってしまったのか・・・・

わたしは何もかも 言ってのけられる この時代を悪いとは思わないけれど 日本にも一瞬神話のような 日本があったことを それを失ったことを 少し寂しいと思う。


「あなたの 陽に焼けた姿が近づいた。かすかに潮の香が わたしをくすぐった・・・」

昨夜 山口百恵のDVDを見ていました。潮騒です。挿入歌とテーマソングですね。いいな
あ・・・。 




「憶えていますか?この貝の色。憶えていますか?あの潮の音。」

吉永小百合さんも 初江役をされているのですが・・・わたしは山口百恵さんの初枝が好きなので今回は 三浦友和 と山口百恵のゴールデンコンビで・・・!

わたしの大好きな 夏の恋小説です。




たまには 古きよき日本の映画や小説に触れてみませんか・・・。最後は三浦友和扮する 新治の祈りの言葉です。

「優しい母と幼い弟をお守り下さい。・・・それから 筋違いなお願いのようですが わたしのようなものにも気立ての良い美しい娘が授かりますように。例えば・・・宮田照吉のところに帰ってきた・・・娘のように。」

新治は初江に もう恋をしていたのですね・・・ああ綺麗だわ!(T_T)

$まほろば

画像提供自然いっぱいの素材集なお 海はイメージであり 神島(歌島)ではありません。鳥羽市の方すみません・・・。これも見付からなくて・・・。