深淵からの祈り…聖なる夜へ
今はもう祝祭の衣を
纏うこともない
賑やかな食卓で
杯を高く掲げることもない
わたしの祝祭は
この掌(てのひら)の中にある
ただ一杯の温められた
葡萄酒の熱のうちに
重く垂れ込めた雲の裂け目
鋭く突き刺さる ひとつの光
それは「祈れ」という 天からの峻烈な命令
神よ、ごらんください
わたしはこれほどまでに小さく
取るに足りない
祈れば祈るほど
わたしという存在は削り取られ
透明な影となって
夜に溶けてゆく
それでも無(む)に近いわたしが
あなたの巨大な歯車の
一部になり得るというのですか?
耳を欹(そばだ)て
沈黙を凝視すれば
風が空虚を吹き抜ける音が
聞こえるばかり
神よ あなたの声を
「聴かぬこと」が罪であり
「聴こえぬこと」が罰である
というのなら
絶望的な静寂こそが
わたしに与えられた聖痕(スティグマ)か…
神よ
あなたの真実の声を聴く
「選ばれし者」は 今どこに?
あなたの聖なる声を
模倣する狡猾な者たちの
舌をどうか世界から
沈黙させてください
聖なる夜にささやかな恩寵を
許されるのなら
偽りの光に惑わされぬ
峻別(しゅんべつ)の眼を下し賜え…
世界の果ての冷え切った
縁(ふち)をなぞるように
柔らかな星の軌跡のような
弧を描きながら――
繋げて 繋げて すべてを抱擁する
円(まど)かな光を
溢れさせ賜え…
聖なる夜に…
