高瀬伸行が働いている土木会社に、アメリカ人のトムがアルバイトとしてやってきた。高瀬は現在45歳だが、中学を卒業してすぐに就職したので、勉強をする機会はほとんどなく、英語もからきし苦手だった。

トムは22歳の純朴な青年で、子供のいない高瀬には我が子を眺めるような思いだった。だから高瀬はトムが日本語をあまり理解できなくても、身振りを交えて熱心に仕事を教えた。トムは次第に高瀬を信頼するようになった。

ある日の昼休み。高瀬は詰所で妻の作ってくれたおにぎりを食べていた。それをトムが興味深そうに見ていたので、高瀬はひとつあげた。トムはひとくち食べると、おいしいと言い、なんていう食べ物なのかと聞いてきた。

高瀬は乏しい英語の知識を総動員して、頭を振り絞ったあげく、出てきた言葉は「…ライスボール」トムは口をあんぐり。