鈴木清剛著『男の子女の子』という小説を読んだ。鈴木は昔、コムデギャルソンに勤めていたが、デビュー作で文芸賞を受賞して作家になった。文章が漫画のように平易かつ軽快で、一気に物語に引き込まれた。

本作は1999年に発表された小説だが、イマどきの若いカップルの会話や言葉づかいがリアルで小気味良い。特にイツオが何かにつけて、彼女のサワに「ターコ」と言うのが微笑ましい。

そして時々、イツオはサワに対して、「~じゃないっすよ」と敬語が混じるときもあり、そういったニュアンスはわかる、わかるとつい頷いてしまう。物語に直接影響しない雑談が多いのも画期的だ。

美術畑の作家では他に村上龍の名がすぐに思い浮かぶ。二人に共通しているのは、徹底的に「物語る」ことだ。固有名詞を大胆に多用して、純粋にストーリーで読者の心を掴んでいく。

能天気で抜けているが、その実しっかりとした自分の考えを持っているサワは、オレがこれまで読んだすべての小説のなかで、最優秀主演女性賞を与えたい。