
素肌がちりちりと焦げるような感覚を感じて、私は目を覚ました。
うっすらと開いた視界が、いきなり真っ白に染まり、自分が何を見ているのか理解するのに少し時間がかかった。
砂浜だった。白い砂浜に、強い日差しが反射している。
目を細めたまま、ゆっくりと視線を海のほうへと向けた。夫婦らしい二人連れが近づいてくるのが見える。
私は、ここでどれくらい眠ってたんだろう。
携帯で時間を確認する。まだ午前中だ。ほんの一瞬、うとうとしただけなのかもしれない。
太陽に焦がされて少しひりつく腕をさすりながら、私は立ち上がった。
なんだかまだ夢の中にいるみたいに、頭がぼんやりしている。
体が、というか足が、重い。
まるで、とんでもなく長い時間、歩き回っていたような感じがする。
あてもなくうろつくうち、ここがお台場だ、ということはなんとなく理解できた。
でも私、なんでここにいるんだっけ。
「忘れちゃったんだ。家族とケンカして家飛び出してきたって言ってたけど」
あぁ、そうそう。
むしゃくしゃして飛び出して、なんとなく普段あまり乗らないゆりかもめに乗って、なんとなくお台場で降りたんだ。
……って、あなた誰だっけ?
「寝ぼけてるし。ずっと一緒に遊んでたじゃない、ビーチ行って、ジョイポリス行って、お化け屋敷行って――」
……あー。思い出した。お台場で会ったんだよね。確か、小香港で……

そう、小香港で、この子と出会ったんだ。
この子……。私はビーチサイドの日陰を選んでとぼとぼと歩きながら、私のすぐ隣に、寄り添うようについてきている女の子を見た。
なぜだろう。
彼女の姿はぼんやりと周囲の景色に溶け込んでいるようで、間違いなくそこにいるのに、間違いなく見えているのに、どんな顔をしているのかが認識できない。
まるでその空間だけ、眼と脳みそが切り離されてしまったみたいだった。私はまだ半分寝ているのかな。

「ねぇ、思い出した?」
何を?
「うちらゲームの途中だったんだけど」
そうだっけ。なんのゲーム?
「ロールプレイングゲーム」
漠然としてるな。ていうかDSとか持ってきてたっけ。
「違うよ、ここであなたが自分のロール――役割を見つけるゲーム」
なんだそれ。役割……?
「そう。役割を見つけないと。あなたの居場所を」
何かおおげさな言い方なんだけど……バイトとか、そういうこと?
「うーん。また忘れちゃったのか。――あなたはさ、自分の役割を放棄してここにきたわけ。ていうか、放棄したから、ここにきて、あたしと会ったわけ。わかる?」
ん? 家族とケンカしたこと? 放棄っていうか……
そこのところが、これまたぼんやりしているのだった。
確かに、いつもより少し激しいケンカだった。わめきちらしながら、頭の片隅で、今日の自分、ちょっとキレすぎてるな、と思ってた。でも後に引けない感じになってたんだよ。あんなに追い詰めるほうが悪い。あれじゃ逃げ場がない。逃げ場がなくなったら、噛みつくしかないじゃん。なんでそれがわからない? そっちは大人でしょ?
――あのときの感覚が、というか気分が、よみがえってきた。何か大事なことを思い出しかけている……ような気がする。

気がつくと、私と女の子は、小香港に戻ってきていた。
この子と出会ったのは、確かここだった。
「ね、決まった?」
決まった、って。役割? ――ごめん、やっぱり意味がわかんない。
「まぁ決めるっていうか、ホントは選択肢はないんだけどね。自分の居場所を認めるか認めないか、っていうことだから」
認めるもなにも、私は私なんだけど。
ふいに妙な不安が膨らんできた。なんかイラッとする、この子。
もう一度、彼女のほうを見た。
ぼんやりとした赤っぽい照明の中に、ようやく彼女の輪郭が見えてきた。
白い服。長い髪。瞳。

私がそこにいた。
「またそうなっちゃうかぁ。残念、ゲームオーバー。でも心配しないで、チャンスは何回でもあげるから」
……そうなんだ。何回でも。
……何回でも、ね……
素肌がちりちりと焦げるような感覚を感じて、私は目を覚ました。
うっすらと開いた視界が、いきなり真っ白に染まり、自分が何を見ているのか理解するのに少し時間がかかった。
砂浜だった。白い砂浜に、強い日差しが反射している。
目を細めたまま、ゆっくりと視線を海のほうへと向けた。夫婦らしい二人連れが近づいてくるのが見える。
私は、

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この物語はフィクションです。
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