飛びの要素 その2 X-factorとX-factor Stretch | 宮崎太輝のグローバルスタンダードゴルフ!

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NY出身のティーチングプロ/トレーナーであるタイキが、日本のレッスン業界を面白くするために始めたブログ。日本とアメリカ最先端のゴルフレッスン/トレーニングの違いを教えてあげちゃいます;)

こんにちは!

Torque Athletic Golf Instituteのたいきです!

今日は飛ばしに必要な要素の一つであるX-factorについてお話させて頂こうと思います。

X-factorとは、上半身と下半身の捻転差のことを指します。

アメリカのゴルフマガジンのJohn Andrisaniによって提唱され、江連忠プロコーチのお師匠さんであるJim McleanによってX-factorが大衆に認識されました。

画像を見てみましょう。

TOPにきたとき、肩と腰の回転している角度の違いでXができてるでしょ?これをX-factorになります。この画像の場合、肩が90度、腰が40-45度って感じでしょうか。

そして、このX-factorがきちんとできているとボールを遠くに飛ばせる!と雑誌に書いてあったりテレビでいってるわけです。

しかし、本当にそうでしょうか?

僕のところには、この形ができているけど飛ばないがよくいます。逆に、こんなに身体が捻れていないのに飛ばせる人は結構いたりするわけです。

なんでそんなに違いがでるの??とお思いな人が結構いらっしゃるかもしれませんが、今回はそれを明確にしちゃいましょう!

まず、この形ができているけど飛ばない人。

こんな人が前回ご紹介した飛びの要素の一つであるKinetic Sequence(身体が回る順番)が適切でないことが多いです。


『飛びの要素 その1』でご紹介した記事の通り、ボールを遠くに飛ばすために理想的な身体のパーツが回る順番は


腰→胴→肩→腕→手

とされています。



しかし、綺麗なバックスイングができているのに飛ばない人はほとんどの場合が


手→腕→肩→胴→腰

といった順番になってしまっていることが多いです。

まあ簡単にいうと手打ちになってるから飛ばない人が多いということにしておきましょう。

それでは、今度はなんで上の画像よりも捻転差が小さいのに飛ばせる人がいるのかを考えてみましょう。

色々と理由があると思うのですが、そのような人たちはKinetic Sequenceがきちんとできていることはもちろん、筋肉の使い方がより優れていると考えられます。

筋肉の使い方!?そんなことはわかってるよ!

と思われる方がいるかもしれませんが、ちょっと運動生理学的な視点から考えて見ましょう。

こちらの図をみてください。



この図は、4つの筋繊維の状態を表しています。


1.少し短い状態、2.通常の状態、3.少し伸びた状態、4.伸びきった状態

皆さんは、この中で一番収縮のパワーとスピードが高いのはどの状態かわかりますか??

ヒントは筋繊維はゴムとかバネのような性質を持っているということです。

・・・
お分かりいただけましたでしょうか?

正解は、3の、『少し伸びた状態』とされています。

以下のグラフから、筋繊維の長さの違いによる収縮のパワーとスピードの違いを見てみましょう。画像を見てみると、少し筋繊維が伸びた状態が一番収縮のパワーとスピードが高いことがわかります・・・

と書きたいところだったのですが、そのグラフが書いてあるテキストをアメリカに置いてきちゃったのでUPできませんでした。ネットでその研究論文を探すのが面倒なので、今回は僕の大学院のノートのメモを乗せておきます。(当時の僕は、このページから何を覚えようとしていたんだろう笑)

そのテキストに載っていたグラフが今から書くことの論拠はなのですが、暇なときに見つけてきますね♪

まあ1と2の状態に関しては、筋繊維の構造上緩んでいたり普通の状態だったら特別収縮のパワーとスピードが上がるようなことはありません。

ちょっと伸ばしくらいが”Stretch-Shorten cycle(筋のストレッチからの収縮サイクル)”によって収縮のパワーとスピードが効率よく生み出されるのです。

          *筋繊維を伸ばし切ってしまった時の例*
人によっては伸びきった状態が正解に思えるかもしれませんが、やはり筋繊維は生きているので伸びきったところからさらに伸ばしたら千切れてしまう。もしくは筋繊維を切れなくするための防衛器官(Muscle Spindle)が働き、筋の収縮がガチっと止まってしまうこともありえます。なので、4ではないと考えられます。

筋肉が適度にビヨ~ンと伸ばされた場合、弾性エネルギーが筋肉内に貯まり反射のような感じでスパン!と縮むイメージを持って頂けると良いと思います。

そんなわけで、筋の収縮は筋繊維が少し伸びている状態が一番スピードとパワーが早いというのがわかりました。

4年くらい前かな?大学院で僕がこれを学んだとき、僕は『バックスイングから切り返しでメインに使われるのはOblique(腹斜筋)だから、こいつを適度に伸ばしたら収縮のスピードとパワーが上がってもっと早くクラブが振るのにいいんじゃないのかな?』って考えたわけです。

それで家に帰って調べてみると、1994年、Mike McTeigueというインストラクターによって『X-factorの度合いがより大きい人の方が飛んでいる』という研究結果が発表されたとありました。

           鬼のような経歴を持つPhillipさん

そしてさらに、2001年Phillip Cheethamを含む研究チームが『TOPからダウンスイングに入る瞬間、肩が回る前に腰が先行することによってX-factorの度合いが大きくなる』ということを発見し、これを『X-factor Stretch(エックスファクター・ストレッチ』と名づけた、という記事をみつけたのです。

大雑把その記事の内容をいうと、やはり切り返しのときに腹斜筋などの筋繊維の束を適度にびよ~んと伸ばすことによって、筋肉内に貯まった弾性エネルギーを反射のように利用できるようになるからクラブを早く振れるようになるってことでした。

まあX-factorもしくは肩と腰の捻転差はできるだけ大きければボールを遠くに飛ぶっていうのは納得いったけど、身体がどうしても回せない人はどうなんだろう??と思いました。

でもすぐに、・・・ああ、筋肉をストレッチしたときの弾性エネルギーと反射が使えれば、身体が回らない人でもボールを遠くに飛ばすことができるのか。。という考えに至りました。

で、その考えはたぶん間違ってないと思うわけです。

もちろん一番最初にご紹介した画像のように、肩が90度・腰が45度くらい回ってればベターなんでしょうけど、別に肩が75度で腰が30度とかでも問題はないんです。

だって、クラブを早く振るためにはX-factorストレッチによって起こる弾性エネルギーさえスイングに運用できればバックスイングで身体をしっかり捻らなくてもボールを遠くに飛ばせるのですから。

長くなってしまいましたが、以上の理由から、身体がしっかり回っていない人でちゃんと飛ばせる人は筋肉の使い方が上手いと考えられるわけです。

納得いただけましたでしょうか?

それでは今回のまとめです。




X-factorの度合いが適切なのに飛ばない人はKinetic Sequence(身体を回す順番)が適切でない人が多い。

X-factorの度合いが小さいのに飛ばせる人は筋繊維を適度に伸ばし、収縮させることによって弾性エネルギーを上手く使っているので飛ばせる。

前者の場合、Kinetic Sequenceを整える+筋肉の弾性エネルギーを使えるようにしてあげられることができればもっと飛ばせるようになるでしょうし、

後者の場合はX-factorの度合いを大きくするようなアプローチ(身体の回し方を学ぶ・トレーニング・ストレッチなど)をすれば、もっと飛ばせる可能性が上がります。

もしも怪我や加齢で身体が回せない人がいたら、筋肉の弾性エネルギーをきちんと使えるようにしてあげるとやはりそれなりに飛ばせるようになります。

X-factorを作ることは大事だけど、飛ばしにより関わってくるのはX-factorストレッチの方だと覚えておきましょう。

それでは最後に、適度なX-factor、X-factor Stretch、Kinetic Sequence、でスイングができるようになったヒロキくんのスイングを見てみましょう。先週初めてレッスンして、2回目のレッスンです。

彼の最後の2つのスイングの印象が、最初の2つのスイングと全然違うことにお気づきになられましたでしょうか?

レッスン前のヒロキくんのスイングは、腰の回転が鋭すぎてしまったために振り遅れてしまっていました。それがレッスン後には振り遅れがなくなったのですが、まだ新しい身体の動かし方とX-factorストレッチの作り方が適切でなかったので動きがぎこちなかったです。

それが一週間経ち、彼はより自然なKinetic Sequenceと適切なX-factorストレッチ、Kinetic Sequenceにより、筋肉を鞭のように使えるようになってきたのがわかります。自然とスイングに柔らかさもでてきたし、身体の動きがどんどん良くなってきてます。

彼自身、前よりももっと軽く・楽に振っているのに飛距離が変わらないといってました。これから彼は埼玉の学校に進学してしまうのでしばらくレッスンできなくなってしまうのですが、このスイングを続けながらトレーニングを始めたらスイングスピードが勝手に上がっていくので飛距離が伸びていきます。

うーん必要最低限のレッスンでここまで変われるなんて、お得なヤツだ笑

そんなわけで、皆さんも前回お話したKinetic Sequenceと今回お話したX-factor, X-factor Stretchについて改めて考えてみましょう!

この記事にご興味を持たれた方は、東京四谷3丁目にあるトータルゴルフフィットネスで僕の体験レッスンを受けてみてください;) 

今回は以上になります。

ここまで読んでくださりどうもありがとうございました:)

たいき