紅白戦当日 朝────────






雲一つない澄み切った空

整備されたグラウンド


朝早くから練習している吹奏楽部



先生達はバタバタしていてなにやら慌ただしい様子なのがまた、紅白戦というものを実感させる





主人公は一人ジャージに着替え端にあるベンチに座っていた





主人公は昨日のこともあり、なかなか寝付けず、一睡もできなかった




(ついにこの日が来ちゃった・・・・)





はぁ・・ とためいきをついていると、ワイワイと何人かの男子がグラウンドへ向かって歩いてくる





「あれ・・・?もしかして・・」




その声に反応し、振り向いた






「神坂先輩」







神坂先輩は駆け寄って主人公のもとへ来てくれた




「おはようございます」





「おはよ。早いね~。やっぱ今日の勝負のこと?」





主人公は目を丸くして驚いた




「先輩も知ってるんですか?」





「みんな知ってるよ!!


いや~…風間に辞められるのも困るけど・・・


俺は○○ちゃんに辞められるのも嫌だなぁ」


はははっと笑う先輩




「先輩・・・・私どうしたら・・・・」




「ん?」





「私のせいで・・・こんなことになるなんて・・」






その時神坂先輩は主人公の手を取り、優しく語りかけた






二次元に恋するお年頃-F1110024.jpg

「大丈夫だよ。



どっちかが辞めるなんて俺が・・・いや、みんな許さないよ。



それに、○○ちゃんが思ってる以上に風間は大人だと俺は思ってるから」


ニコッとほほえむと、主人公まで笑顔になる





「そうだと信じます。」






「じゃあ、俺実行委員だから行くね。」




「お疲れ様です」







先輩がその場を去ると、栄子がやってきた






「○○~っ」




「栄子!!今ちょうど神坂先輩としゃべってたんだよ」





「あ…そうなんだ~。

それよりさ、ついに今日だね!!」




一瞬何か違和感を感じたが、気にすることなく話し続けた




「そうなんだよね・・・大丈夫かな・・・・」






「大丈夫大丈夫!!○○が辞めるなんてことになったら私も辞めてやる!!」



主人公は栄子を抱きしめた


「栄子~」





「あーあついあつい!!(笑)」








「おっレズ誕生か!?」



ひょこっとアキラが二人の前に現れた






「アキラ!!おはよ~」






「栄子は私のだから渡さないよ~」





「誰もいらねーよ」



「ちょっと!!」




殴りかかろうとする栄子から笑って逃げていくアキラ






「ふふ、仲良しだよね~二人。」



「ちょっと、誤解しないでよ~?私は○○のものなんだからっ」




「そうだそうだ~!!」




二人で笑っていると、一瞬主人公は頭がズキンとして、目の前がクラッとした





(頭痛っ・・・)





頭を押さえていると、栄子が顔を覗き込んだ




「だ・・・大丈夫?

頭痛い?」





「ん~、多分寝不足!!最近寝れなくて・・」







「え~大丈夫なの?!

うちら今日綱引きしか出ないし、無理しないでしんどかったら保健室行きなよ?」





「ん、ありがとね!!」





しかしズキズキと頭痛は止まらなかった・・・────────────







紅白戦 プログラム

午前の部

1 開会式
2 体操
3 50メートルハードル
4 100メートル走
5 騎馬戦(男子)
6 百足競走(女子)

昼休み



午後の部

7 二人三脚
8 借り物競走
9 長距離走
10 学年対抗リレー
11 結果発表
12 閉会式







『開会宣言にわたり、本校長の●●先生からお話があります』


パチパチ・・・




「ったく・・こんなんいらねーから早く始めよーぜ」


チッと不機嫌な様子で後ろのアキラに話かける




「まあ落ち着けよ」




「校長話なげーんだよ。
推薦ん時なんか俺の話なんか全く聞いてねぇで・・」




その時大翔は斜め後ろに主人公がいるのを見つけ、急に前を向いて黙ってしまった





「おい、大翔?どうしたんだよ・・」





「・・・るせーな!!

だ・・黙って話聞いとけ!!」



「おっお前が・・・・・・・!!!!」




アキラはわなわなと怒りを示したが、ふぅとためいきをついて「まあ今に始まった話じゃねーしな・・」と遠い目をしていた






一方大翔は、なぜか鼓動が早くなる



(んだよ・・・もうアイツのことは考えないって決めたのに。

もうどうでもいいヤツなのに・・・

なんで意識しちまうんだよ・・・)




伏し目がちにチッと言わせ、足で砂を蹴っていると、後ろでドサッという音が聞こえた


とっさに反応すると、主人公が倒れていた






ザワッッッ─────……






大翔は慌てて主人公のもとへ駆け寄ろうとすると、スッと伊吹が主人公を軽々と抱きかかえる



「保健室行ってくる」




キャーと女子の声が聞こえる





「わっ私もいく!!!」



栄子も伊吹のあとについていく






グラウンドがざわつく




『コホン。えー静かに。

そして私は本校を愛し・・・』






「伊吹くんかっこよかったね~!!」


「あんな軽々抱きかかえられて・・・○○ちゃん羨ましい」



女子生徒達は興奮気味にひそひそと話す









大翔はただ黙って拳をぎゅっと握りしめた────────────────────









保健室────────────




ガラガラッ



「おう、二人ともありがとな」



「佐藤先生」



「○○の具合はどうだ?」


「ただの過労と寝不足だって言ってました。」





「そうか。


先生は戻るからお前達も様子見て戻ってこい」


「はい」





ガラガラとドアを閉め先生が出て行く






「さてと・・・私はおじゃまかしら?」



「いや……」



その時、勢いよくドアが開いた



「うわ・・びっくりしたあ!!先生かと思ったら・・

風間くん・・・。




私、グラウンド戻ってるね」



栄子は静かに保健室を出て行った





静かな保健室




ベッドに横たわる主人公の横でイスに座っている伊吹




ドアの前で立ちすくむ大翔





「・・・座れば?」



「いっ言われねーでも座るつもりだ」




主人公を挟んで反対側のイスに座った





主人公の顔を見て、少しホッとする大翔




「んだよこいつ・・ぐっすり寝やがって。赤ん坊みたいな顔して・・」




主人公を見つめるその顔は、とても愛おしそうに見えた






「・・・・○○が最近体調が良くないのは・・・・俺らのせいだ。

いや、俺のせいだ。」





「それどーゆー意味だよ・・・」





「おれが帰国してからずっとこんなんだった」





「瞬は・・・自分が帰ってこなかったら何も問題なく俺らは幸せだったっていいたいのかよ」







「そんな感じ・・・」






「はっ・・・んなわけねーだろ。そんなんだったら○○はお前を気にするわけなんかねー。


俺、薄々気づいてた。
○○は瞬が気になってんじゃねーかって。


俺はそれを知ってて・・・それをわかって告白して○○とつき合った。



いや、俺の一方的だったのかもしんねー・・・・





は・・・なんで俺がこんなたかが女一人にこんな振り回されてんだ・・・。。





でも・・・・○○を傷つける方がもっと辛いってわかったから・・

瞬が○○を守れよ。」






「どーゆー意味?」





「もう勝負は無しだ無し!!


大体お前から水泳とったらなんもねーじゃん??(笑)


なのに否定もしねーで・・・お前はほんっとお人好しだからな。



悪かったな。
張り合えて楽しかった。」



大翔は口元をあげてふっと笑いながら保健室を後にした







伊吹はすやすや眠る主人公を見ながら呟いた










「お人好しは・・・どっちだよ・・・─────。」