(な・・・・・なんで・・・)







主人公はまさかの大翔の発言が信じられなかった





「おまえが辞めないなら俺が辞める」







その言葉に、胸が痛む






(私・・・・





そんなに風間くんにとって迷惑な存在なの・・)








「───わかった…。



私が辞めることで風間くんが納得するなら・・・・。」



「○○は辞めさせねーよ」






伊吹がスッと前にでてきて、伊吹の背中で主人公は隠れてしまう





「退部にするんなら俺がなる



今回の混乱は俺が原因だ





俺が辞める」




伊吹が真剣な顔で大翔を見る





「はぁ」



アキラがためいきをつく



「瞬が辞めるなら俺も部活なんか辞めてやるよ」



「アキラってめっ・・・」




アキラの思わぬ言葉に眉間にしわをよせる大翔






「大翔どうしちまったんだよ。俺らはこんなことで部活辞めるようなヤツだったかよ・・・・っ。


中学ん時キツい練習乗り越えたんじゃねーのかよ!!!」







その時





「その通りだ」





「佐藤先生」




佐藤先生は化学の教科書とチョークケースを右手に持ち、4人の会話を聞いていた





「風間、それはフェアじゃない。勝手すぎる。



そうだな・・・・


来週の紅白戦で戦うのはどうだ」





「こっ紅白戦・・?」



主人公は思わず声をあげる



「ああ、毎年陵泉高校では紅白戦、体育祭、球技大会・・・たくさんのスポーツ行事が組み込まれている。


一番初めの大会、紅白戦はクラス内で競う。


前のデータ見せてもらったが、伊吹と風間は1000メートル走がほぼ同じタイムだ。



長距離走で風間と伊吹が走るってのはどうだ?


それだ負けた方が勝った相手の要求を飲み込むってわけだ」





「んなバカバカしいもんやってられっか・・・」


大翔がケッと吐くと



「ならお前部活辞めるか?寮も出て行ってもいいんだな?」



佐藤先生の裏に何か秘めたような笑顔になにも言えなくなる大翔





「・・・・わかったよ。もし、俺が負けたら辞めてやるよ。



でももし俺が勝ったら──……


二人とも部活辞めろ。」






キーンコーンカーンコーン・・・・・




「決まりだな。


よし、予鈴が鳴ったから教室に入れ」





こうして、二人は紅白戦で勝負することになった・・・・・・・








───────放課後


大翔はイスに座って机にひじをついて窓からグラウンドを見ていた




「おいっ本気かよ」



アキラが大翔の机の前へ現れる




「今更なしにしろってのか?」




「相手をわかってんのか!?瞬だぜ??」



「瞬だから負けるっていいてーの?」




「ちげーよ!!


瞬とは中学ん時から一緒にいたんじゃねーのかよ!」




その言葉に机をバンッと叩く大翔





「・・・・・瞬だからこそ




仲間だからこそ俺は絶対に許せねーんだよっ!!





あいつが○○をマジで好きだと思うか!?」






「すっ好きなんじゃねーの・・」



大翔に圧倒され、たじろいでしまうアキラ





「あいつが好きなのは今も昔も渚だけだよ




渚とうまくいかないから○○を利用して忘れようとしてるにすぎねーんだよ!!!」





イスから立ち上がり、怒鳴ったため顔が赤くなっている





「大翔・・・・おまえ○○のこと────」






その時アキラは、大翔がどれだけ主人公のことが本気なのか痛切に感じた…






─────────一方伊吹と主人公は紅白戦に向けて夜から河原でジョギングをしていた






「お前まで走らなくていいのに・・・・」




「だって・・・私のせいでもあるから・・・・・・」



二人は軽く走りながら紅白戦の話をしていた





「風間くんとタイムは同じなの?」




「ああ、昔からアイツと俺は首位争いしてたからな。」






「そうなんだ・・・・・


でも、伊吹くんまで辞める意味がわかんないよ。

風間くんが迷惑だと思ってるのは私の存在でしょ・・・!?


風間くんにお願いしてみる。伊吹くんが負けても・・・私だけ───」




その時、伊吹は足をともる



主人公は気づかず走り、ふっと後ろを見て思わず引き返す



「どっどう・・・・」



「俺にだって守りたいものがあるんだよ


それに負けるかどーかなんてまだわかんねーじゃん?」




いつでも余裕な笑みを見せる伊吹を見て主人公まで笑顔になってしまう




「そ・・・そうだよね」






「っし、そんな不安なようじゃ、あと4キロ追加だな・・・・」



伊吹は軽やかに主人公を抜かし走り出す




「えっちょっ・・・・本気ー?」



二人はその後も夜暗くなるまで走り続けた──────────







その後も主人公は紅白戦に向け伊吹のジョギングにつきあい、部活では大翔の目につかないように隅のほうでマネージャーの仕事をこなしていた








──────そうして紅白戦前日










(ついに明日かあ・・・・)




主人公は部活帰り一人で帰っていると、校門で大翔が鞄を持つ手を肩にかけながら誰かを待っていた




(風間くんだ・・・・・・・・・・)






ビクビクしながら主人公が黙って通り過ぎると、大翔が主人公の腕を掴む








「きゃ・・・・・・・・なっ・・・なに」






おびえたように、大翔から少し離れて大翔の顔を見る




大翔はなにも言わず、ただ主人公を見る









「・・・・・・・・・・・・・・・・



いっ
言っときますけど私たち今までずっと頑張ってきたんだから・・・




明日は絶対勝ってみせる。




伊吹くんとジョギングして今日なんて10キロも────…」







主人公が気まずい空気を破りおのずから喋っていると、大翔は主人公の腕を引っ張り、自分の方へ引き寄せる







「な・・・・・・・っ







大翔は真剣な目で主人公の顔を両手で掴む






久しぶりに間近で見る大翔の顔








(風間くんだ・・・・・・)








なぜか目頭が熱くなり、泣きそうになる主人公








(泣くもんか・・・・・風間くんは私のライバルなんだ。)








自分に言い聞かせて必死で目に力を入れている主人公を少し切ない顔で見つめる大翔









「はっ・・離して────……」








これ以上大翔の顔を見ると堪えきれなくなりそうだったので、主人公は両手で大翔の胸を押す









すると、大翔は主人公の顔を引き寄せ無理矢理キスをした





二次元に恋するお年頃-F1080020.jpg











「ん・・・イヤっっ・・・・・・!!!!」









ドンっと押し、目に涙をためながら眉を顰めて大翔から離れる













「・・・・・・・そんなにいやか





舌かみきりそうな顔しやがって」






ハッと笑う大翔は少し寂しそうに見えた







(ちがう)













「そこまで瞬が好きか」









(違うの・・・・・












あのまま受け入れたら

きっとあたし自分を許せなくなる)









「なんで瞬なんだよ







なんで…俺の親友なんだよ………」







何度この切ない顔をさせてしまっただろう───・・・






主人公は胸がぎゅうっと苦しくなる







「あーあ
アホらしくなってきた






なんでこんな女にホレちまったんだよ」








右手をおデコにあてながら優しく笑う








(ごめんね






風間くんごめん……)







涙が頬を伝い、ぼろぼろととめどなく流れる涙








大翔は主人公にデコピンをする







「あた・・・・っ」





「この俺がお前のような凡人を好きだって言ってやってんのによっ」










「ほんとに……



バカな女だぜ」












主人公の頭をなでる大翔の顔は昔と変わらない優しい顔だった







「あとで泣き見せたっておせーからな





明日は手加減しねー





瞬にも言っとけ」








「の……のぞむところよ………っ」








腕で涙を拭きながら少しフッと笑う主人公















「強気だなこの野郎





それでこそ○○だぜ」





大翔は鞄を肩にかけ、笑いながら去っていった








「ばーか………」



主人公は涙をながしながら笑って、ずっと大翔の後ろ姿を見送った









(きっといつか
この夜のことを死ぬほど後悔する日がくるかもしれない──……







でもあたしにはこうすることしかできない






あたしは・・・・・









伊吹くんのビー玉みたいな透き通った瞳を信じるって決めたから────・・・・・・)