主人公はボロボロになった部誌を拾い集めた






「─────…っっ」






(なんで私だけこんな目に
遭わなきゃいけないの・・)




主人公が涙をポロポロと
流しながら部誌を見つめていると


キィ・・・



「あ・・あのさ・・」



振り向くとそこには早乙女先輩がいた



「早乙女先輩。」


主人公はあわてて後ろを向いて涙を拭き、何事もなかったかのように



「なにか忘れ物ですか?」


と答えた




「○○ちゃん・・・大丈夫?俺、なんも大したこと言えないけど、○○ちゃんはいつも部誌をびっしり書いてたし、こんなことするわけないと思うんだよね。

アイツらの中には疑ってる人もいるかもしれないけど、信じてくれる人もいるから・・」




そう少しオドオドしながら主人公を励ましてくれた




「先輩・・・ありがとうございます!!もう一度部誌書き直してみます!!」




「なんか・・俺にできることでもあれば・・」




「大丈夫!!先輩は練習に戻ってください!もう監督来ちゃいますよ?」




「あ、うん・・・じゃあ、行くね」


早乙女先輩が部室から出て行こうとした時、主人公が叫んだ


「早乙女先輩・・・!!」



あわてて振り返る先輩




「どっどうしたの?」




「・・・わざわざありがとうございます。元気もらいました!!」




早乙女先輩はニコッと笑った後、部室を出て行った





「よし──……くよくよしててもだめよね。書き直そう!!」




主人公はボロボロになった部誌を見ながらまた書き直した







─────それから何時間が経過しただろうか、辺りは真っ暗になっていた




主人公は部誌を書くことに集中していて、時間も忘れていた





バンッ─────




急にドアが開いた




「わっ・・びっくりしたー。風間くん・・」




大翔は真剣な顔で主人公をみる




「わ、もう暗いね。練習終わったの?」





「・・・○○



おまえ何で本当のこと言わねーんだよ。」




大翔の顔は真剣だった



「え・・・」




「一番部誌を頑張って書いてたのはお前だろ?そんな奴が普通こんなことするかよ」





「・・・・ 」




「誰が見たとかやったとかしんねーけど、お前がやってないことくらいわかる」




大翔の言葉はいつも主人公の支えになっていた





「風間くん・・・・」






「ほら、帰ろうぜ」






そう言い、一瞬主人公も立ち上がろうとしたが、「あ・・」といい、また座った



「ごめん。あと少しやりたいことあるから・・」




大翔はハァとため息をつき、「しゃーねーなあ・・」と言って、ドカッと主人公の隣に座った





「早く終わらせろよ」





「え・・でも・・時間かかるよ?」



そう言うと大翔は顔をそらし、少し頬を赤らめて




「こんなことがあったっつーのに一人で帰らせるかよ」



主人公は「え・・」と大翔の顔を見た


主人公の視線に気づき、目が合うと「ジロジロ見んな・・」と言われてしまった






(風間くんの顔・・赤い・・)




そう思いながら、主人公はふふっと笑い、部誌を再び書き出した







────────それから一ヶ月後





サッカー部は夏の大会に向けて練習に励んでいた


夏というのもあり、マネージャーの仕事も大変であまり大翔と話す機会も減ったが、嫌がらせもピタッと無くなった




「お疲れ、○○ちゃん」


「お疲れさまです神坂先輩、どうぞいっぱい飲んでくださいね!」



すると神坂先輩は、急にはぁっとため息をついた



「どっどうしました?気分悪かったら休んだ方がいいですよ?」




「いや・・・○○ちゃんは本当に可愛いなって」






「もー神坂先輩は相変わらずですね」




「あ。もしかして本気にしてない?」





神坂先輩は急に真剣な顔になり




「じゃあさ




今度の大会、俺が得点入れれば、なんかご褒美くれない?」




「え・・?




ご褒美・・・・って?」





「んー・・・・


じゃあキスとか」




「キ・・・・・?!」



主人公が真っ赤になると
主人公の肩をポンっと叩き


「俺がんばるから、見てて」



そういってまた練習へ戻って行った





「ちょっ─……」



主人公が戸惑っていると、




「おす」





主人公の髪をくしゃっとしてタオルで汗をふく大翔





「あ、お疲れ・・」



「ん…?なんかお前顔赤いぞ?」



「えっ…」





「ちょっと○○~!!神坂先輩と何約束してたの~!!」


栄子が探るように聞いてきた




「栄子・・・。いや・・・そんな・・」



「先輩と・・?なに喋ってたんだよ」





「いや・・次の試合で先輩が点数決めたら



その・・・


キスって・・・」






「キス?!?!」

二人は声をそろえた




「意味わかんねー・・」


大翔が不機嫌になった





「えー。いくらなんでもそれ冗談でしょ~」

栄子は笑う


「うん、私も冗談だと・・」
「じゃあ俺も」





「え?」







「じゃあ俺が点数決めたら、俺がお前を奪う」





「えぇ!?」






「きゃー風間くんったらダ イ タ ン!!!!」




「神坂先輩なんかに負けねー。」



そうつぶやくと、大翔も練習へ戻っていった





「はー。風間くん、絶対○○好きだよね」



「えぇ・・」



「最近どうなの?」



「よくわからない・・・」



「なんで??」





「確かに風間くんは優しいし、いつも助けられてる。

最近は風間くんを目で追うようにまでなっちゃってる。。

でも、沙也加も好きじゃない・・?


本気で好きにならないようにどこかセーブしてる自分がいるのかも・・」




「沙也加なんて関係ないよ!!大事なのは○○の気持ちでしょ??沙也加なんて最近全然練習にもこないし・・」




「・・・・・」





主人公は伊吹のことがあるまでは、あまり大翔のことを男としてみていなかった。

しかし、伊吹がいなくなってから、改めて大翔の優しさを感じ、だんだん男として意識し始めていたのは事実だった。




主人公はもうどうしたらよいかわからなくなっていた───…………。









──────試合前日



「風間くん」



放課後、主人公は階段を下りようとしていた大翔を呼び止めた




「なんだよ?」




「いや・・・あの・・」



もじもじしてると大翔は



「・・気になるから早く言えよ」




「あの・・・これ・・」




渡されたのは、ミサンガだった




主人公が少し照れながらうつむいて言った


「へっ下手くそだけど・・・
一生懸命作ったの・・」




そう言ってうつむいたままスッと渡した



「・・・・・」





(・・・・・あれ?反応無し・・?)




主人公が少し顔をあげて大翔の顔を見ようとしたその時、大翔はミサンガをもつ主人公の手をひっぱった






「わっ・・・・・」




二次元に恋するお年頃-F1080019.jpg








大翔にものすごい力で急にぐいっと引き寄せられ、主人公はすっぽりと大翔の胸の中へ収まってしまった




「からまく・・・くるひぃ…・
(訳:風間くん苦しい)」




「るせーよ・・・・・」






大翔の顔はどんな様子なのか見ることはできなくても、心臓の音の早さだけで緊張しているのが伝わってきた───……





「覚えとけよ・・・・」




「え・・・?」






「絶対奪ってやるから───……」





「・・・明日、頑張ってね・・」






「たりめーだろ。」







もっとぎゅうっと強く抱きしめられたが、大翔の体温が心地よくて、主人公はずっとこうしていたいと思うのだった────…………