「おまえ・・・どこ行ってたんだよ!!」


「あははは、ごめんねー?心配してくれてたんだ?」


「あたりめーだろ!!」


「へえ~大翔がね~。ふーん。」



ニヤニヤとしながら大翔を見て、ふと主人公と目があった



「あら・・もしや大翔・・彼女???」


「ちっ違います!!」
主人公はあわてて否定した


「おまっ・・そんなに即答しなくても・・。。」



「あははは!!こんな可愛い子、大翔には勿体なさすぎるよねぇ。はじめまして、渚です!!」



「あっ○○です!!」



「○○ちゃんかあ~…大翔、ウザイかもしれないけどいい奴だから、仲良くしてやって!!」




にこにこしながら笑う渚は、とても明るくて、いるだけでその場が明るくなるような・・そんな人だった



(わあ・・この人・・可愛い。あの伊吹くんが恋をするのも、わからなくないなあ)




「で、渚。お前なんで急にいなくなったんだよ」


「あ~…えへへ!」



「えへへじゃねーよ。瞬が・・どんだけ心配してたと思ってんだよ・・」

(あ・・・)


瞬という言葉に反応してしまう主人公



「瞬・・・・。懐かしいなあ。元気にしてる?」


「ああ、アイツ、まだ水泳続けてるよ」



「そっかあ・・・」



「なあ・・なにがあった・・?」




「・・・私


ニーマン・ピック病C型なの。」



「ぴ・・・ピーマン??」



「大翔・・相変わらずだね・・。


まあ、私も初めて聞いた病気だったよ。」





「それ、やばいのか?」




「いつ進行するか、いつ発症するか医者でもわからない。

症状は、学習障害、発達障害だって。」





「え・・・・」



あまりの告白に主人公は驚いた



「あれは中2の時だったね・・。自分でも自分自身を疑ったよー。私、元気じゃん、普通じゃんって(笑)



でもね、中2の夏休みくらいから、だんだん物忘れをするようになったの。頭がボーっとして、たまに瞬の名前が出てこない日もあった」




「な・・治るのかよ?


今・・大丈夫なのか??」



「うん!!発症する年齢が遅ければ遅いほど、進行も遅いみたいで。


でも治る方法は、正確にはないみたいなの。
発症する人は世界でも500人くらいらしくて・・。

日本人で発症する人は本当にまれなんだって。

だから日本では完璧な治療っていうのは、まだ報告されてなくて・・」





「じゃあ・・・渚さんはどうなっちゃうの?!」




「○○ちゃん…だっけ?
優しい~~!!
ありがとね。


βシクロデキストリンの静脈内投与がいいらしくて・・・って何ってかんじだよね~?(笑)


薬の吸収を効率的にする補助剤として使われてて、安全性が高いことで知られてるらしいんだけど…それは海外にしかないの。


それに、まず日本人にはまれな病気だから、もしかしたら日本人には合わないかもしれないらしくて。

でもそれでこの病気が治るなら・・やるだけやってみようかなって!!」




「合わなかったら・・どうなるんだよ!!」




「わからない・・。でも、やるだけやらないで後悔して死ぬよりマシ!!私、これでも運いいから大丈夫!!」

渚は明るくピースをする

それは、病人だとは思えない明るさで主人公も大翔も圧倒されてしまって・・






「それで学校辞めたのか?」



「うん。


結構病んだんだから~!!


急に発症してみんなの態度が変わったらどうしようとか、間違えて男子トイレ入ったらどーしようとか・・(笑)

あとは・・





瞬に嫌われたらどうしようとか」











「親と話し合って田舎へ帰って暮らすことを決めたの。その前の日に、瞬にだけでも言おうと思ったんだけど・・・なかなかタイミングなくて・・」




(あ・・・伊吹くんが言ってたあの時だ・・)




言おうか迷ったが、気がつけば主人公の口が開いた



「あのっ・・・・!!



伊吹くんは・・・ずっと渚さんがいなくなる前の日のことを後悔してました。


すごく、私に話してくれたときも辛そうで・・・


伊吹くん、まだ渚さんのこと忘れてなんかないと思うっ……



伊吹くんに会ってあげてください!!!」




主人公の目からぶわっっと涙が溢れた





「○○ちゃん・・・・」




渚はハンカチを出して主人公の涙を拭いた



「ありがとう。優しいね。

瞬がそんなに自分のことを人に話すのは珍しいよ。


大翔もこんなキャラじゃなかったんだよ~?

いつもツンケンしてたのに・・

きっと、大翔も瞬も、○○ちゃんの優しさに
魅力されたんだと思う。」




「○○ちゃん、あのね、私はもう瞬に会わないって決めたの。


未練がないっていえば嘘になるけど、過去ばっかり振り返ってるようなヤワな女になりたくないの!!」


渚はにっこり笑った



「海外に行って、もしかしたら失敗するかもしれない。

もう誰も覚えてないかもしれない。

でもね、あんなに好きだった人やいい仲間に出会えたことは、一生心に残るだろうって信じてる。」






主人公は涙が止まらなかった





「○○ちゃん、大翔や瞬をよろしくね?


大翔、忘れないでよ?」


「あたりめーだろ!!最後みたいな言い方すんな!!」




「大翔・・本当に優しくなったね・・。


瞬に伝えて。

ありがとうって。」



「ああ・・・。


いつ行くんだよ?」



「それが・・明日・・なの」





「は?!!!!!!!!!!明日かよ!!!!!」



「うん、明日の昼、アメリカへ行くつもり。一応、行く前に故郷を見とこうと思って……」




「おまえはいつでも急だよな・・・



渚!!!


帰ってこい!!


ぜってーにな!!!」




渚はすこし涙目になった







「約束する、また会おうね!!」





渚は大きく手を振り、去っていった






「瞬のやつ…アイツどうすんだ……」




大翔はポツリとつぶやいた









────夜


主人公は家にはいてもたってもいられなくて、河原へ走った



「水曜日じゃないし・・来るわけないよね・・」






川を眺めながら主人公は一人考え事をしていた




「・・・・・・・○○・・か?」






ばっと後ろをみると
伊吹がいた



「いっ伊吹くん!!どっどうして・・・・」




「や、俺は・・なんか家にいたら落ち着かなくて」




「わっ私も・・・」





「まねすんなよ」




伊吹はすとんと主人公の横へ座った




「・・・・・・」


主人公が黙ってうつむいていると伊吹は



「まだ渚のこと気にしてんの?」




「伊吹くん!!!!!」




主人公が急に顔をあげたので伊吹が驚く




「なっなんだよ・・」





「渚さんに今日、会ったの」





その瞬間、伊吹の顔が変わった







「渚さん、病気なんだって。記憶が無くなったり、知能の発達が遅くなったりするらしい・・・・」





「・・・・」




「渚さん、明日海外に行っちゃうんだって!

もしかしたら・・・海外でなにかあるかもしれない!!

だから・・その前に・・。


渚さん、伊吹くんに会いたいと思う!!

明日昼アメリカ行きの飛行・・・・」



「・・・なこと・・・」



「え?」





「勝手なことすんなよ!!!!!!!!!」







まるで電流が走るような衝撃だった






「俺はもう終わったって言っただろ?!






今更会ってどーしろって言うんだよ・・・」






「でも!!会わなかったら後悔・・」





「ほっとけよ!!!!それは俺の問題だろ・・・!!!!!!


○○はわからねーだろ!!!!!!」






主人公は目に涙を溜めた



「・・・・かんないよ・・



伊吹くんの気持ちなんて・・



わかんないよ!!!!!!!!!」





主人公は居たたまれなくなってその場を走って去った






「ちくしょー………」





伊吹はどうしていいかわからなくなっていた──…………







────次の日



主人公が泣きはらした目で学校へ行くと、伊吹の姿はなかった


(まだ来てない・・・)



「よ・・・○○、目どうした?」

大翔が心配して来てくれた


「ううん・・何でもない・・」


「なくねーだろ。なんかあったのか?」




「・・・・」



昨日の事をまた思い出したら泣いてしまう・・・

主人公はそう思って黙ってしまった



大翔はそんな主人公を見て、頭をポンっと叩いた



「なにブサイクな顔してんだよ。らしくねーよ」



大翔はそれ以上聞かなかった。
大翔はなんだかんだいいながらいつも主人公を励ましてくれる



「今日朝、風間くんから聞いたよ。私がお気楽に服見てる間に、凄いことが起こってたんだね・・」

「瞬のやつ・・どうすんだよ・・」


アキラと栄子もやってきた




「昨日夜電話したんだけど結局アイツなんも言わなくて・・」





ちょうどその話をした時、瞬が教室に入って、席についた



「おい、おまえ・・・なに学校来てんだよ・・・」




大翔が伊吹の肩を掴む



「…なにが?」




「渚に会いに行かねーの?」




「うるせーな。

もう・・・・


ほっとけよ!!!」




瞬がどなると教室中がシンとなった



みんな、二人を見ている



二次元に恋するお年頃-284113195.jpg

「お前、最低だな。中学であんなに応援してもらっといて結局自分は何もできないのかよ・・・」




大翔がそういうと瞬は黙った




「もう・・・放っておこーぜ。」




大翔が伊吹の肩から手を離し、呆れた顔でイスについた








「言ってあげなよ」










みんなが主人公をみた


伊吹も顔をあげた





「本当は会いたいんでしょ!!
今行かなくていつ行くの?!


人間なんて明日何が起こるかわからないよ!


そーやってタイミングばっか逃してるからいつまでたっても成長しないのよ!!!!!!


男ならしっかりしなさいよ!!!!!!!!」






主人公は泣きながら伊吹に叫んだ






「─────……」



伊吹は黙ってガタンと立った




「………行ってくる。」








「え・・?」



主人公は伊吹をみた

















「おまえのその素直でまっすぐなところ、すげー好きだった。


俺には持ってない強さがあってさ。






このまま終わるわけにはいかないよな。


○○の言葉、ガツンときた。



おれ・・・・行くわ」



そう言うと、伊吹は主人公のところへきて、後ろから抱きしめた



二次元に恋するお年頃-F1070011.jpg



「今までありがとな。」




伊吹がそう言うと教室中がワァっとなった




「伊吹くんがんばれー!!!」

「伊吹ー!!!男見せろー!!!!!!!」





みんなが応援している中、伊吹はカバンを持ち、背を向けたまま右手をすっとあげて教室から出て行った




主人公は涙が溢れていた



(私──…………





伊吹くんが好きだったんだ・・・・・)






それは


主人公が気づくには
遅すぎる恋だった──……














***

余談ですがニーマン・ピック病は実在するそうです。

A型B型C型があり、C型が一番まれなケースみたいですね。


大学で医学の勉強をしてて、ピック病を知りました。
まー若年性アルツハイマーをこう呼ぶそうです。
調べていたらまだまだ色々な病気があるんだなあと思いました。

健康に生きている自分の幸せを噛み締めるべきだなあ~…だなんて思いました。

はい、どーでもいい(?)話ですいません(・∀・)


恋人はキャプテン9話目・・意外と続いた自分にびっくりですが、たまにまた読んでくださると嬉しいです!!^^



以上、余談でした。