健診や人間ドックなどで腫瘍マーカーを測定することがあると思います。血液検査で結果が分かりますので、非常に簡便なのが特徴です。

 

 腫瘍マーカーは、腫瘍細胞が産生する物質や、腫瘍の存在に反応して作られる物質を検出し、数値化する検査です。したがって腫瘍が存在すれば数値も上昇するので、腫瘍のスクリーニング検査として健診などでも利用されています。

 

 ただし、健診時のスクリーニング検査として腫瘍マーカーを測定するときには注意が必要です。腫瘍マーカーは正常細胞でも産生されますし、腫瘍性の病気以外でも上昇することがあります。また、加齢、妊娠、喫煙などの影響を受けるマーカーもあるので、上昇していたら必ず腫瘍が存在するというわけではありません。

 

 健診で測定された腫瘍マーカーが高値だったため、様々な画像検査を受けたが全く原因が分からず、ただ不安だけが残った。これはよくあるパータンです。

 

 健診で行う腫瘍マーカー測定の目的は、悪性腫瘍の早期発見のはずです。その意味で本当に役立つのは、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAくらいで、それ以外ではほとんど役に立たないと思われます(私の古い知識ですので、有用な検査が出ているかもしれませんが)。

 

 もちろん腫瘍マーカー測定でがんが発見されることはあるでしょう。しかし腫瘍マーカー高値でがんが初めて発見されたというケースでは、ある程度進行したがんであることが多いと思われます。腫瘍マーカー検査は、健診のオプションとして行われることが多く、そのような方はおそらく画像検査もしっかり受けているでしょう。したがって、腫瘍マーカーを測定していなくても、画像検査で腫瘍を指摘されると思います。

 

 腫瘍マーカー測定の意義は、がんと診断されたあとの補助診断、がん治療後の再発診断にあると考えます。健診時に測定しても悪くはありませんが、結果に振り回されないように注意が必要です。

 

 先日健診結果を持って受診された患者さんです。腫瘍マーカーの項目にサイログロブリン(Tg)が載っており、それが高値だったので受診されたとのことでした。そもそもTgは腫瘍マーカーなのでしょうか。

 

 悪性腫瘍の診断のための検査という意味では、「腫瘍マーカーではない」となります。甲状腺の良性腫瘍や炎症性疾患などでもTgは上昇しますので、高いからと言って悪性とは限りません。

 

 一方で、悪性腫瘍の術後経過観察という意味では、「ある限られた条件の下では腫瘍マーカーである」となります。

その条件とは、

①甲状腺分化がん(乳頭がんや濾胞がん)の術後である

②甲状腺全摘後である

③抗サイログロブリン抗体(TgAb)が陰性である

 

 したがって、Tgを健診目的での腫瘍マーカーとすることは不適切と考えます。

 

 記事内を「サイログロブリン」で検索するといろいろ出てきますので、参考にしてください。