外来診療中、「サイログロブリンって何ですか?」という質問を多く受けます。以前、結構詳しく記事にしているので、「サイログロブリン」で記事内を検索するとたくさん出てくると思います。重複する内容もありますが、今回改めて説明したいと思います。

 

 サイログロブリンとは何なのかについては以前の記事をご覧ください。今回はサイログロブリン値に異常が出る病気についての説明です。

 

 サイログロブリン(Tg)は甲状腺のいろいろな病気で高値を示します。甲状腺結節、慢性甲状腺炎(橋本病)、バセドウ病、亜急性甲状腺炎など、多くの甲状腺疾患で高値になる可能性があります。もちろん高値を示さない場合もあります。Tgは甲状腺にしか存在しませんので、甲状腺の病気以外で高値を示すことはありません。Tgが高い場合、甲状腺に何らかの病気が隠れているということが分かりますが、どんな病気なのかまでは分かりません。

 

 甲状腺結節の経過観察、あるいは甲状腺がん(分化がん)術後の経過観察の際に、Tg値が定期的に測定されます。

 

 甲状腺結節では、Tgがあまりにも高いとき(例えば1000を超える)、手術を勧める根拠の一つになります。Tgが上昇傾向の時にも手術を勧める場合があります。嚢胞成分が多くを占める結節の場合、増大に伴ってTg値が急に上昇することがありますが、時間がたてば低下していきます。

 

 甲状腺分化がんの術後(TgAb陰性の場合のみ)、Tg値が上昇傾向の時には再発や転移の可能性を考えます。特に骨転移があると、著明に上昇することがあります。

 

 Tgは甲状腺に蓄えられているタンパク質ですので、無痛性甲状腺炎や亜急性甲状腺炎などの破壊性甲状腺炎で上昇します。診断の助けにはなりますが、定期的に測定する意味はありません。

 

 高値ばかりではなく、低値(正常範囲)であることも時には参考になります。小さい結節の場合、Tg値は上昇しないこともありますが、大きな結節では高値を示すことが多いと思われます。明らかに大きな結節があるのにTgが低値の場合は、甲状腺由来ではない腫瘍(胸腺や副甲状腺など)の可能性を考えることができます。