診察の最初には必ず患者さんの訴えを聞くのですが、その時に「体調が悪い」とだけ言う方が大変多い印象です。「体調が悪い」には人それぞれいろいろありますので、具体的にどんな症状なのか分かりません。だるいのか、疲れやすいのか、あるいは気分が悪いのか、食欲がないのかなど、全部「体調不良」といえます。もちろんその後に「どのように悪いのか」と具体的に聞きますので、「体調が悪い」で問題ないのですが、具体的にお話しいただいたほうがスムーズです。

 

 また、具体的に話していればもっと簡単に診断されただろうという例を最近経験しました。

 

 発熱とのどの痛みのために、ある大きな病院の救急外来を受診された患者さんがいます。今の時期に発熱するとかなり面倒ですよね。その患者さんもいろいろ検査(血液検査、レントゲン、CTなど)されて最終的には新型コロナウイルスのPCR検査を受け、結果は陰性。解熱剤を出されて帰宅されましたが、何日たっても発熱が続き、同院の内科を受診されました。そこでやっとわかったようですが、「のどの痛み」はいわゆる咽頭痛ではなく、前頸部痛(甲状腺の痛み)だったのです。診断は亜急性甲状腺炎、ステロイド治療で直ちに解熱、痛みもなくなりました。

 

 今発熱すると、PCR検査陰性でも大変なことが起こります。その患者さんも2週間は会社に来るなと言われ、会社ではその方の座席の周辺が消毒されたそうです。

 

 このようなケースはまれではないはずです。私は2名の患者さんを経験しました。

 

 これは最初に診察した医師が悪いのです。「のどの痛み」の訴えの時に、前頸部を触診していないのです。発熱外来は忙しくて大変でしょうけど、しっかりと問診と触診をしていれば、このようなことにはならなかったはずです。しかしその時に単に「のどが痛い」ではなく、指で「この部分が痛い」とはっきりと伝えていれば、こんな面倒なことにはならなかったかもしれません。

 

 ご自身のためにも、訴えはしっかり具体的に伝えてください。