反回神経に腫瘍が浸潤している場合、私たちはどのように対処しているのでしょうか。

 

 術前からすでに声帯麻痺があり、反回神経への浸潤が強く疑われているとします。実際の手術でも、やはり神経が完全に腫瘍内に埋もれていれば、反回神経を合併切除します。そして可能な限り神経再建術を行います。再建術については後日記事にします。

 

 術前には声帯麻痺がないのにもかかわらず、反回神経への浸潤を認めることも多いです。腫瘍が神経に触れている程度であれば、ほとんどの場合は神経を温存することができます。一方で、神経が完全に腫瘍内に巻き込まれていることもあります。それでも神経は麻痺していないのです。前回の記事のとおり、太さ1㎜の反回神経の中の、ごく一部の線維が電気信号を伝えるのに重要だからです。神経の表面が障害された程度では、神経は麻痺しません。腫瘍の浸潤を受けて、神経の機能を障害されるまでには、ある程度の余裕があるということです。

 

 このような場合、神経が腫瘍内に完全に埋もれているわけですから、普通は神経を温存できません。腫瘍とともに神経を合併切除することになります。しかし...