甲状腺乳頭癌の手術は、できるだけ臓器や機能を温存する方法で行われます。呼吸をしたり声を出したりための反回神経、副甲状腺、頸部を通る太い血管、筋肉など、可能な限り合併切除をすることなく温存するのです。切除できるものを全部取ってしまう手術は、患者さんにとっては負担になりますが、手術する側の立場ではむしろ簡単な場合も多いのです。躊躇することなく全部切除してしまえばいいわけですから。温存手術のほうが大変な場合も多いのです(もちろん状況によって異なりますが)。

 

 機能を温存する手術では、例えば温存した筋肉の間に隠れていたリンパ節を取り残してしまう、血管の背面にあって見つけにくいリンパ節を見つけられなかった、などということが起こるのです。

 

それにしたって、「取り残しなどとんでもない」と思われる方も多いでしょう。でも、多くの場合はきちんと切除できるのですが、状況によってはどうしても残って(「残して」のほうが適切でしょうか)しまうことがあるのです。もちろんそのときには切除したつもりでいるのですが。

 

リンパ節を残してしまう理由は様々な理由があることが分かっていただけたでしょうか。取り残してしまったことが後で分かると、本当に申し訳なく思います。