
これまでは、マハリシ・スクールの授業風景を中心に、マハリシの意識に基づいた教育についてご紹介してきました。今回から少し趣向を変えて、彼らの社会性がどれほど成長しているのかについて、具体的な研究事例をあげて見ていきます。
研究とはいっても、数値による評価だけでなく、ある設定された状況を生徒はどのように対応するのか、という具体例ですので、皆さんも一緒になって楽しめると思います。
● 教育の役割
□○ 生徒の学業面と社会面の成長
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教育者であれば、誰もが生徒に対して望むこと――それは、責任感や他人への思いやりを養い、社会の習慣や決まりを進んで守っていける人間に成長して欲しいということです。
しかし、これまでの学校教育では、生徒がテストで良い成績を取るための勉強ばかりが重視されて、生徒の「社会性」を成長させることについては、ほとんど注意が払われてきませんでした。
マハリシの意識に基づいた教育では、意識に関する知識を学び、また、意識を開発する技術を実践することで、生徒の「学業面」のみならず、「社会面」の両方を発達させることに成功しています。これらの有益性は、六〇〇以上の科学的研究によっても裏付けられています。
マハリシ・スクール中等部の数学教師、ガイ・ハチャードは、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドの私立学校で教鞭を取ったことのある、経験豊かな教師です。彼は次のように述べています。
「世界には優秀な学校がたくさんありますが、マハリシ・スクールの特筆すべき点は、生徒が、学業面だけでなく、人格面においても、親切心、尊敬心、誠実さ、責任感、率直さ、思いやりといった質を大きく成長させていることです。しかも、生徒は、毎日、超越瞑想を実践し、純粋意識を経験していますから、教師は生徒の社会性を成長させようと躍起になる必要がありません。人格のあらゆる側面を豊かにする、この生命の基本的な場を経験することで、ごく自然に、生徒の社会性が成長していくのです。」
実際に、生徒がどのような道徳観をもっているのかを示す、研究調査があります。この研究は、「思いやり」「約束を守ること」「盗みをしないこと」「損害賠償」といった観点から、生徒たちの考え方や行動の仕方が社会的であるかどうかを調査したものです。考え方や行動の仕方は、それが自分の利益だけでなく、集団の調和にも貢献している場合に、社会的であると考えられます。

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□● 生徒が選択したもの……
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この研究では、マハリシ・スクールの高校一年生から三年生までの二十四人の生徒を、個別に面接しています。それぞれの面接は約一時間。そのなかの質問は、ハーバード大学の道徳教育センターによって開発された、「道徳に関するインタビュー」から採用したものです。
生徒に、学校で実際に起こり得るいくつかの状況を提示し、それに対して自分自身やマハリシ・スクールの他の生徒が、どのように考え行動するかを尋ねました。この研究では、そうした生徒の答えを、他の学校の生徒の答えと比較するという形で、マハリシ・スクールの生徒の社会性を計測しました。
それでは、その時の問題とマハリシ・スクールの生徒の解答を以下に掲載しましたので、読者の皆さんも一緒に問題を考えて、彼らの解答と比較してみてください。問題は、全部で四問。最初に、質問があり、その後に、質問の解説、生徒の解答と続きます。
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│ 第一問「人気がない生徒を助けるべきか」 │
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ビリーは志願した大学の面接試験を、次の土曜日の朝九時に受けることになりました。その大学はビリーの町から六十四キロ離れているのですが、ビリーにはそこへ行くための交通手段が何もありません。進路指導の先生はビリーを車で送ってあげようと思いましたが、その時間はすでに他の予定が入っていたため、誰か彼を車で大学まで送ってくれる生徒がいないか、聞いてみることにしました。
しかし、彼を車で送ろうと申し出る生徒は一人もいません。ほとんどの生徒は、「ビリーは好きではない」と言います。ビリーは目立ちたがりやだからです。
生徒の一人、ハリーは自分の家の車が使えることを知っていますが、ビリーを一番良く知っている生徒たちが「忙しい」とか、ただ「できない」と言っているのを聞くと、自分がビリーのために何かしてあげるというのはどうかと迷っています。
それに、彼にとって土曜日は一週間で一日だけ、朝遅くまでゆっくり寝ていられる日です。もしビリーを送るとなれば、かなり朝早くに起きなければなりません。
ハリーはビリーを大学の面接に送っていくべきでしょうか。
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あなたならどう答えますか?
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【解 説】
ここでは、みんなから良く思われていない生徒を助けるべきかどうか、という状況が描かれています。概して生徒は、そんなことをすれば友達から仲間外れにされるのでないか、と心配します。生徒たちの一般的な答えは、「みんなが良く思っていない生徒を助けるなんて、かっこわるい」とか、「誰も助けたがらない人を、どうして僕が助けなければならないんだ」、といったものです。
このような態度は生徒たちの中に排他的なグループを作り、閉鎖的な雰囲気を作り出します。生徒の答えで良く聞かれることは、「どちらにしても私の学校では、生徒同士が互いに気配りをすることはあまりない」というものです。
【マハリシ・スクールの生徒たちの解答】
テリー(高校一年生)の答え:
他の人たちを助けるのは当然のことです。他の人たちを助けることによって、その人たちがより速く、楽に進化するように助けることができます。マハリシ・スクールの生徒たちは、他の人たちを助けることの価値を知っています。・・・チームを組んでバレーボールをするときと同じように、まとまってプレーをすれば必ず勝つことができます。私たちは学校で互いに助け合い、そうしてみんなが仲良くなります。
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カーラ(高校三年生)の答え:
彼を助けてあげることで、周りのすべての人たちの質を高めることができます。リーダーはみんなの肯定的な質を引き出すようにするべきです。私たち自身が肯定的であれば、自動的に肯定性が返ってきます。マハリシ・スクールの生徒たちは他の人たちを助けるのが好きです。私たちは、誰もが助けてもらうのに値すると考えています。他の人たちを助けることによって、環境の質も高めることができるということを知っているからです。
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│ 第二問「約束を守るべきか」 │
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中学校のクラス旅行の前に、先生が生徒に言いました。
「クラスのみんながお酒を持ち込んだり、飲んだりしないと約束してください。もし飲んでいる生徒がいれば、家に送り返します」。
生徒たちは、先生の承認がなければ旅行そのものができなくなることを知っていました。そこで、クラスのミーティングでは、全員が先生の提案に賛成しました。
旅行中に数人の生徒たちが、仲間のジムを湖まで遊びにいこうと誘いました。湖に着くと、彼らはお酒を一瓶取り出し、回し飲みを始めました。
ジムは飲むのを拒否するべきでしょうか。
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あなたならどう答えますか?
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【解 説】
このジレンマは、クラス旅行でアルコールを飲まないという約束を守るべきかどうか、という状況です。今日の生徒たちの典型的な考え方は、「見つからなければ構わない」というものです。
多くの生徒たちは、約束を破ることは責任や信頼を損なうことになる、とまでは十分に認識できていません。また、今日のアメリカ社会では、アルコールや麻薬が高校生の間にかなり浸透しているため、生徒たちはこのような状況は珍しいことではないと感じています。最近の世論調査では、アルコールや麻薬の問題が全国の学校で大きな問題になっていることが明らかになっています。
【マハリシ・スクールの生徒たちの解答】
カレン(高校三年生)の答え:
彼はアルコールを飲まないという約束を学校にしました。旅行中にアルコールは飲まないと自分で決めたのです。私なら、飲むのを拒否します。安定性を守るためです。社会の中では、自分の言ったことは自分の態度で示す必要があります。・・・マハリシ・スクールの生徒たちは、自らの肯定性を保ち、人生の質を良くするために、できる限りのことをすると思います。
◇●◇
メアリー(高校三年生)の答え:
約束を守ることは大切なことです。人間関係は信頼に基づいているからです。もし、ある人を信頼できなければ、コミュニケーションの能力が低くなってしまいます。責任感を持つことも大切です。そうすれば、人からいつも信頼され、頼りにされるようになります。人々は互いに信頼し合うことを望んでいると思います。なぜなら、もしある人が別の人を信頼しないとしたら、あるいはみんなが一人の人を信頼しないとしたら、グループの調和が乱れてしまうからです。それでは全体としてのまとまりが欠けてしまい、全員が一つになって行動することもできなくなってしまいます。
全員が一つとなり、一つの全体として共に行動し、無敵になる。これが、この学校が他の学校と違っている点だと思います。共に行動することで無敵になり、より拘束が少なくなります。共に行動すればより多くのことを行えるようになります。一人一人が行動に集中していれば、一人でするよりも多くのことを、グループ全体でなし遂げることができます。
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│ 第三問「盗みをしても良いか」 │
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メアリーが歴史の授業に来たとき、生徒は全員そろっていましたが、先生がまだ来ていませんでした。メアリーは少しの間座っていましたが、先生が来るまで数人の友達と廊下でおしゃべりをすることにしました。彼女は鞄を開けて、友達に見せたいと思っていた手紙を取り出し、鞄を開けたまま机の上に置いて、教室の外に走って出て行きました。
同じクラスのトムがメアリーの鞄の中を覗いてみると、二十ドル札が見えました。彼はその二十ドル札を彼女の鞄から抜き取ろうかと考えました。
トムはお金を取るべきでしょうか。
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あなたならどう答えますか?
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【解 説】
このジレンマは、クラスメイトの鞄の中からお金を盗んでもよいか、という問題です。ほとんどの生徒が盗みは違法で悪いことだと認めているにもかかわらず、アメリカの多くの生徒は、お金を盗むことには理由があると考えています。「鞄を放置しておいたメアリーに責任がある」と言う生徒もいれば、「もしトムがお金を必要としているのなら当然盗むべきだ」と言う生徒もいます。生徒たちの典型的な答えは、「教室にお金が放置してあれば、なくならないほうがおかしい」というものです。これらの答えは、学校内で個人の所有物が盗まれるということが現実の問題であるということを示しています。
【マハリシ・スクールの生徒たちの解答】
サラ(高校二年生)の答え:
もし私が誰か他の人に盗みを働いたら、その人は私に同じことをするでしょう。盗みは人を尊敬していないという証拠です。
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ジム(高校二年生)の答え:
分別を持つべきです。盗みは自制心が欠けている証拠です。社会は信頼に基づいているのであって、盗みに基づいているのではありません。盗みは社会に対して、微妙な感情のレベルで悪い影響を与えることになります。
◇●◇
テリー(高校一年生)の答え:
それはメアリーのお金です。他人の所有物を盗めば、盗られた人を傷つけ、自分自身の悟りへの成長を阻むことにもなります。そのお金は私のものではありません。もし二十ドル欲しかったら、自分で外で稼いでくるべきです。盗みは正しい行動ではありません。盗みは盗られる人にとっても、盗る人にとっても、学校にとっても、社会にとっても、世界にとっても、良くありません。あらゆる想念や行動は、良きにつけ悪きにつけ、すべて環境に影響を及ぼすからです。
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│ 第四問「お金を出し合うべきか」 │
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メアリーが教室に戻ってみると、鞄の中から二十ドル札がなくなっているのに気づきました。彼女は誰が取ったのか見つけようとしますが、お金を盗んだトムも含めて、誰も自分が取ったとは言いません。先生が来たので、メアリーはお金がなくなったことを先生に話しました。
先生は、クラスのみんなに次のように提案しました。
「お金を返そうとする人が誰もいないのですから、みんなで五十セントずつ出し合ってメアリーにお金を返しましょう」。
生徒たちはメアリーのためにお金を出し合うべきでしょうか。
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あなたならどう答えますか?
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【解 説】
トムはお金を盗みましたが、それを認めようとはしません。先生はメアリーに盗まれたお金を返すために、みんなでお金を出し合うことを提案します。このジレンマは、社会的な行動を行うためには生徒たちの善意が必要であるという点で、一番目の状況に似ています。
正しい行動手段を規定する決まりはありませんから、生徒たちは自分自身の責任感や、共同責任感に頼らざるをえません。このジレンマは、社会的な答えの割合が最も低いのが特徴です。つまり、生徒たちは不注意であったメアリーに責任があると考え、お金を出し合うことには消極的になります。
【マハリシ・スクールの生徒たちの解答】
ケン(高校一年生)の答え:
誰かが何かを失ったとしたら、それはみんなが何かを失ったことと同じです。人は苦しむべきではありません。この学校ではその精神がより強く息づいています。ほとんどの生徒がお金を出し合うべきだと考えると思います。この学校にいると、ますますこの学校の雰囲気の良さが分かってきます。否定的な行動を行うよりも、人を助けたいという気持ちが自然に育ってくるのです。
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ジム(高校二年生)の答え:
困っている人は親切に助けてあげるべきだと思います。この学校は一つの大きな家族のようで、愛や思いやりがあふれています。
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テリー(高校一年生)の答え:
この学校ではほとんどの生徒がお金を出し合うと思います。自分の好きな人に対してだからそうするのです。この学校ではみんなが助け合います。ここの生徒たちは、みんなを喜ばせたい、できるだけ円満に解決したい、と思うことでしょう。
◇●◇
ある女生徒は、最初はそのクラスメイトを助けるべきではないと答えました。「それは私の責任ではありません。その状況に対しては、お金を盗んだその人に責任があるはずです」と言いいます。
しかし、彼女はしばらく考えてから、こう続けました。
「もし、みんながお金を出し合おうということに決めたら、私もそうするでしょう」。
マハリシ・スクールの大多数の生徒は、その状況に自分も責任があると感じています。そして、この生徒の返答から、この学校の生徒たちが、互いに強い肯定的な影響を及ぼし合っていることが分かります。この生徒は続けて、「クラスのみんなが他のクラスメイトを幸せにし、状況をできるだけ調和的に解決するように努めるだろう」とも述べています。
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この研究結果を表したのが下の表です。
■ マハリシ・スクールの生徒たちの返答
社会的な選択と行動の割合の合計
自分の選択 自分の行動 他人の選択 他人の行動
思いやり 100% 100% 100% 100%
約束を守る 100% 100% 100% 100%
盗みをしない 100% 100% 100% 100%
損害賠償 79% 88% 88% 88%
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平均 94% 97% 97% 97%
※ 上記のパーセンテージは、社会的な答えをした人の割合です。横軸の項目にある「選択」とは、与えられた状況の中で自分がどのように行動すべきと思うかを指しています。「行動」とは、自分が実際にはどのように行動すると思うか、「自分」は、質問された生徒自身、「他人」は他の生徒たちのことを指しています。
マハリシ・スクールの生徒は、社会的な答えの割合が、平均94パーセントから97パーセントという非常に高い範囲内にあります。
それぞれのジレンマを個別に見ると、マハリシ・スクールの生徒の100パーセントが、「自分も他の生徒たちも、人気がない生徒を助ける」、「アルコールを飲まないという約束を守る」、「盗みをしない」、と答えています。自分や他の生徒たちが、「クラスメイトのためにお金を出し合うだろう」と答えた生徒の割合は、少し下がっています。
全体的に、マハリシ・スクールの生徒たちのジレンマに対する返答は、社会的なものばかりでした。
彼らは他のほとんどの生徒たちも、同じような行動をとるであろうと考えています。多くの生徒たちは、自分で決定した内容が、学校の調和とまとまりにどのような影響を及ぼすかについて、良く考えています。
さらに生徒たちに共通していたのは、自分の考えが自分自身の個人的成長や、他の生徒たちの発達を促すかどうかを基準にして、決断を下していたことでした。
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次回は、一人の生徒の質疑応答の様子をじっくりと見ていき、他の学校との比較を行っていきます。お楽しみに。