アメリカ-キューバ国交回復へ | 明日へのトレイン-season2-

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トレイン(Train)には「電車」という意味の他に「訓練する」という意味もあります。「明日へのトレイン」とは、「明日の自分のために訓練する」という意味が込められています。

今週水曜日に明らかになったアメリカとキューバの国交正常化の方針。
1年前より秘密交渉が行われ、今回の発表までに国交正常化に向けた条件等の擦り合わせは大方完了しているという。アメリカ政府スポークマンの発表によると、アメリカは冷戦時代から現在にかけて行ってきたキューバへの渡航制限やキューバ特産の葉巻やラム酒などの輸入制限を緩和する。一方、キューバは通信分野を中心にアメリカ資本を受け入れる。カリブ海を挟んだ隣国同士の経済的な交流を強化することで、双方の経済発展を目指す。


キューバは1898年米西戦争のスペイン敗戦によって、当時スペインの植民地フィリピン,グアム,プエルトリコとともにアメリカへ割譲された。その後、数度の政変を経て、1953年に始まるキューバ革命によって独裁的なアメリカの傀儡政権であるバティスタ政権が崩壊するまで、アメリカの実質的な支配が行われていた。バティスタ政権を失ったアメリカはカストロ率いる革命政権とは別の政権樹立に向けた工作を行っていたが、革命政権が実施した農地改革によるアメリカ資本の排除したことで、政権を敵視することとなった。新キューバ政府はアメリカ資本の石油精製会社や製糖会社をはじめ,電話会社,銀行などの大企業を国有化し、アメリカとの対立が決定的になった。1961年、キューバとの国交関係を断絶し、キューバ産砂糖の輸入も禁止した。そして、亡命キューバ人からなる反革命軍を支援し、キューバ南部ヒロン湾から侵攻させたが失敗。この事件をきっかけにキューバ政府は革命の社会主義化を宣言。東側諸国、特にソ連との結びつきを強め、1962年のキューバ危機を引き起こした。


このように、アメリカとキューバの国交断絶はアメリカの自己都合的な要素が強く、前時代的価値観による不毛な対立はアメリカの生きた負の遺産のであった。この度、オバマ大統領が国交正常化の方針を打ち出したことに対し、財界はこれを強く支持した一方、キューバ亡命者コミュニティや人権保護活動家たちからは「キューバの自由と民主化が進展しない限り経済制裁を解除してはならない」と反発。しかし、上下両院の過半数を野党共和党に支配されている中、強い大統領権限が認められる外交分野で"歴史的"実績(レガシー)を作りたいオバマ大統領は今回打ち出した"歴史的"大転換の実現に全力を注ぐ姿勢だ。キューバはソ連崩壊に伴う1990年代の経済混乱をきっかけに経済おいては市場経済が部分的に導入され、自由化が進んでいるが、依然キューバ共産党による独裁体制は続いている。

わが国においてはキューバは野球の強豪国として有名であるが、このキューバ野球の強さはやや複雑な事情からくるものである。キューバは長らく一般国民がつくことができる最も高給取りは医者であった。しかし、最近では観光客が落とすチップを収入にするタクシードライバーの方が国内では高給取りだという。さらに、高給取りを目指すためには政府高官になるのが正規ルートだが、亡命するという選択も存在する。実際にキューバからアメリカに亡命する国民は後を絶たない。アメリカのメジャーリーグでプレーするキューバ出身選手は皆亡命でアメリカに入国した選手達である。キューバではこども達は野球を一生懸命に練習し、ナショナルチームの選手に選出され、遠征先での亡命を目指すのが"夢"である。
しかしながら、彼らの亡命理由は自由のないキューバでの生活からの脱出というよりは、キューバの経済低迷の背景が色濃い。

アメリカ-キューバの国交正常化は賛否両論あるが、アメリカの冷戦時代の負の遺産を解消するという点で非常に意義ある一歩となる。