アベノミクスへの評価(第4回 原発再稼働編) | 明日へのトレイン-season2-

明日へのトレイン-season2-

旧ブログ引き継げませんでした。新たに開設します。
トレイン(Train)には「電車」という意味の他に「訓練する」という意味もあります。「明日へのトレイン」とは、「明日の自分のために訓練する」という意味が込められています。

このところ、忙しく更新ができていませんでした。
来る14日投開票の総選挙に合わせて始めたシリーズ「アベノミクスへの評価」の第4回目です。
今日は原発再稼働問題にしました。

2011年の東日本大震災の津波被害に伴う福島県の福島第1原子力発電所事故は、我が国の原子力発電事業だけではなく、エネルギー政策そのものの根幹を揺るがす歴史的大事件となりました。
原子力発電所の定期点検後の再稼働に必要な事業審査が停止され、全国の原子力発電所が稼働できない状態となり、節電が叫ばれました。

従来、原子力発電所の事業計画の審査を行っていた原子力安全委員会は廃止され、新たに原子力規制員会が設置されました。また、原子力発電所の安全審査手順も根本から大幅に見直され、 「世界一厳しい安全基準」(安倍首相)が制定されました。しかし、これら政府による取り組みも国民の原発アレルギーを払しょくするには至っていません。世論調査でも原発の再稼働に反対もしくは慎重な意見が賛成や容認する意見を上回っており、政界でも議論が続いています。与党自民党は原子力発電を我が国のベースロード電源と位置づけ、厳しい安全審査をクリアした原発については順次再稼働を進めていく方針です。

以下、各党の原発政策(今回の総選挙公約から抜粋)を紹介します。

自民党:重要なベースロード電源として活用するが依存度を可能な限り軽減
民主党:2030年代の稼働ゼロ
公明党:新設は認めない
維新の党:即時ゼロではなくフェードアウト
次世代の党:先端技術を維持しつつ脱原発依存体制の構築
社民党:即時ゼロ
共産党:即時ゼロ
生活の党:即時ゼロ

この問題については様々な観点から議論することができますが、今回はアベノミクスへの評価と題していますので、経済的観点から見ていきたいと思います。

まず、以下が資源エネルギー庁が発表している原発停止に伴う燃料費増加の見通しです。レイアウトの制約上見にくくなっていますが、ご了承ください。

電力9社計 2010年度実績 2011年度実績 2013年度推計
総コスト 約14.6兆円 約16.9兆円  
燃料費 約3.6兆円 約5.9兆円  
うち原発停止による燃料費増(試算) +2.3兆円 +3.8兆円
燃料費増が総コストに占める割合 約13.6%  
原子力利用率 66.80% 25% 3.80%

震災後に燃料コストが増大していることが分かります。一人当たり換算では3万円の負担増です。今年のデータはありませんが、今年は原油安にもなりましたがそれ以上に円安が進んだのでさらにコストが増大しているはずです。
次にこのデータの参考となる各電源の発電コストです。2013年分のみ抜粋しました。


LNG 石油 石炭 原子力
燃料費(円/kWh) 13 20 5 1

このデータを見る限り、原子力発電は圧倒的にコストパフォーマンスがいいですね。

しかし、立命館大学の大島堅一教授によると、原発は他の発電方法よりもコスト高だといいます。それを証明するのが、経産省が行っているモデル計算ではなく、これまでの原発の発電実績と費用を基に発電原価を計算した以下のデータです(抜粋)。


火力 原子力
発電にかかる費用(円/kWh) 9.8 8.64

さらに、電源立地を名目に地元懐柔策に投入されている税金等を加えるとさらに原発のコストは高く、火力発電や水力発電よりもコスト高になるといいます。
反原発や脱原発を叫ぶ人たちはこの点を指摘しているのです。

しかし、この対立する2つのデータには共にあることが考慮されていません。

コストの中身です。火力発電のコストと原子力発電のコストは明らかに根本が違います。
火力発電のコストの大半は燃料費です。火力発電の主な原料であるLNGや石油は国際情勢の変化に弱く、価格が高騰しやすい傾向にあります。また、わが国は陸上のパイプラインを持たないため、輸送コストが高い上に輸入元が限定されるため、価格交渉力が弱いと言われています。特にLNGや石油への依存度が高くなれば高くなるほどその傾向は強くなります。

一方、原子力発電のコストの大半は技術費です。燃料自体はLNGや石油と比べ10分の1ほどしかかかりませんが、建設費や設備維持費が非常に高いのが特徴です。建設時も高度な技術が要求され、廃炉にも高度な技術を要します。

このコストの中身の違いはアベノミクスに大きな影響を与えます。
火力発電のコストである燃料費は海外に流れる一方、原子力発電のコストである技術費は国内に還元されるのです。そして、その技術が輸出されれば、さらに国内にお金が入ってくるのです。わが国の貿易収支は2011年以降、赤字が続いています。マネーの海外流出は日本円の価値を下げ、さらには国債の信用度を下げかねない大変由々しき問題です。場合によっては国家の破綻につながります。この原因は火力発電への依存が高まったことによる化石燃料の輸入増加にあります。また、国内にある工場が電力料金の高騰に耐えられず海外移転を余儀なくされたためでもあります。原発は建設・維持・廃炉のすべての段階で高い技術、そして労働力を必要とします。原発を再稼働させることによって、原発を建設することによって、原発を廃炉にすることによって、たくさんのお金が関連業界に巡り、雇用が創出されるのです。それも、原発が立地する地方において。
これはアベノミクスが掲げる景気回復や雇用創出だけでなく、地方創生にもつながります。だから、原発は何が何でも再稼働させなければならないのです。

原発の再稼働について、賛成するサイドも反対するサイドも、その本質を議論していません。お互いに国民の共感を得やすい表面的なデータを根拠にして非建設的な議論をしているにすぎません。


アベノミクス下で目指す原発再稼働の本質は
「原子力は国内の技術屋に金を払い、火力は海外の油屋に金を払う。」



資料
「エネルギーコストと経済影響 について - 資源エネルギー庁」
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/002/pdf/002_001.pdf
時事ドットコム「じつは断トツで高い原子力の発電コスト - Foresightコンテンツ-新潮社ニュースマガジン:」
http://www.jiji.com/jc/foresight?p=foresight_7605