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世間では
「ホンネはカネだ」
というのがタテマエだ。

何でもカネに換算できることにすれば、何でも数値化できる。おかげで経済学が理論化された。心理学だってこの手法で理論化できる。気象学にさえ、冷暖房コストから気候を数値化する指標があるくらいだ。

このタテマエはホンネを隠蔽する隠れ蓑として抜群の性能を発揮する。
人間には表沙汰にして語りたくないホンネが山ほどある。何であれ「ホンネはカネだ」ということにしてしまえば、個々人のプライベートなホンネは詮索されずに済まされる。すべてのホンネはカネなのだから。
このタテマエは子供でも知っている。何でも「カネのため」ということにしてしまえば、大人は黙ってしまう。そしてそれ以上追求しない。

かつて未成年の援助交際が問題になったとき、援交少女達は口をそろえて「カネのため」とテレビ取材に答えた。
あるいは番組制作側がそう編集しただけかもしれない。いずれにしても世間向けに公開されるまでには「カネがホンネ」というタテマエに見解が統一される。
番組のタテマエコメンテーター達は、これに阿吽の呼吸で応え、少女達の貧困問題というタテマエ論を展開した。貧困が彼女たちを不幸なビジネスに追いやるのだと。しかし、実は経済的に恵まれている家庭の少女達も多いのだという取材事実が明かされと、タテマエコメンテーターたちは
「子供たちにまで蔓延る拝金主義」
とう見解にいい換え、
あくまで「カネの問題だ」というタテマエを貫いた。
こうして少女たちの内面の自由と秘密は護られた。
カネというタテマエが、女の世界の闇を隠匿し、少女達の名誉を護ったのだ。

このタテマエは便利だから私も使う。
職を辞するときの言い訳になる。
「もっと報酬の高い職場を見つけたから。」
一見鼻につく発言に思えるが、ホンネを言ってしまったらもっと角が立つ。
「オマエ、いくらカネ出せるのか?」
こっちの方が雇用者の支払い能力を査定する一般的で常識的な基準だ。
「テメーの人間性が気に入らないから辞めてやるんだよ」
なんて普通は言わない。
後々あいつはカネのために辞めたんだといわれるかもしれないが、それが最も普通で一般的な言い訳だ。なぜならそれがタテマエだから。

名誉が傷付けられ、人間性が踏みにじられても、大抵はカネの問題にされる。
名誉毀損を訴える裁判はもちろんあるが、その前にその事案は賃金未払いになりませんか?となる。賃金未払いがあればそっちでやった方が勝ち目がありますよということになればいわれるがままにそうする。
別に、カネが欲しいわけでなくても、「敗訴」という屈辱を相手に味あわせることができるなら、それはそれで満足だ。
自分の経験蓄積や勉強のために有利なら、無賃で仕事を引き受けてもよい場合もある。人間関係が健全で気持ちよく働けるなら、多少の未払いがあっても許せる。
実際に許し難いと思わせる仕打ちを受けるのは大抵はカネ以外のことなのだが、なにか反撃をしようということになれば、たまたま
「そこに未払いがあるから訴える」
ということになる。

ただ、これをやりすぎると世の中どんどん勘違いした方向に向かってゆく。
本当は未払いに不満だったわけではない。
職場のシステムのいい加減さや約束を守らない態度、都合が悪くなると責任を押しつけてくることや、そっちが頼んできた仕事なのに妨害して失敗させようとしてきたり。
直してほしいことはそっちの方なのに、カネさえ払えば良いと思っているみたいでちっとも反省しない。むしろ規則づくめで融通がきかなくなり働きにくくなってゆく。

名誉毀損で訴える場合であっても、結局は慰謝料請求という形をとる。
別に、カネが欲しいワケじゃないんだが、世間はそのような解決を推奨する。そして受け入れなければならない。
そのとき、敗者の負け惜しみは、
「オマエのホンネはカネだったんだろ?」
だ。
そうとも。それが世間のタテマエだ。
ホンネという名のタテマエだ。
カネというタテマエに逃げることで屈辱の苦しみを回避しようというのだ。

だから
1円裁判というのがある。
カネなんか欲しいワケじゃない。

本当にホンネ言っちゃっていいのか?

ホンネは決まってるだろ?
テメーに屈辱を与えることだよ。
土下座して謝罪させ、汚物の付いた靴でその頭をグリグリと踏みつぶしてやりたい。犬の格好させて俺の汚物を喰わせて、「ご主人様、美味しゅうございます。」と言わせるまで許さない。
これでどうかご勘弁をと札束出してきたら、札束に小便かけてびしょびしょに濡らしてから、「こんなもの要らねえわ!」と、奴の口の中にねじ込んで飲み込むまで許さない。

もちろん、世間様はそんなこと許さない。
「たくさんお金を貰って許しなさい」
というわけだ。
仕方ないから、慰謝料取れるだけ取って我慢してやる。
カネが欲しいわけじゃないんだけどな。

そして敗者のお約束の負け惜しみ。
「オマエのホンネはカネだったんだろ?」

そうじゃない!
そのホンネがタテマエなんだよ!