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過剰なゴキブリ嫌いも
過激思想へのエスカレートに似ていなくもないが、相手がゴキブリだからこそ平和なものだ。

なんて呑気なことを思っていると、
途端にアンチゴキブリ党たちに叩きのめされる。

「だからお前は不潔なんだ!」

そして延々と、ゴキブリがいかに人類の敵であるか、不潔で有害で、そしてそれを軽くみているお前は浅薄で罰当たり、いや人類の敵だと言わんばかりに長い説教を食らう。
ゴキブリ嫌いたちはこの種の理論武装には余念がないから勝ち目はない。
というか、こちらには別に戦うつもりはないのだが、
向こうが
「ゴキブリ嫌いにあらずんば人にあらず」
という態度で敵対してくるので戦意のない私は常に自動的に不戦敗ということになる。

過剰なゴキブリ嫌悪が世間一般に定着してしまうと、
ゴキブリは悪だから絶滅させるにはどんな手段でも使うべきだと言われたとき
なんとなく説得力を持ってしまう。
ミサイルであろうと、
核兵器であろうと!?

一度嫌悪や恐怖や憎悪が発生すると指数関数的にその感情が増幅されて歯止めが効かなくなる。

本気?
本気でゴキブリを絶滅すべきだと思ってるのか?

しかし相手が人間の場合でさえ、
ローマ人はフェニキア人を根絶したし、ナチスは本気でユダヤ人を絶滅させるつもりだったと言われている。

ここは冷静に考えてみるべきところである。
と言いたいところだが、

ここで冷静な意見を発言すると、たちどころに裏切り者にされるのだ。

非国民、売国奴!

いやちがう。
この場合は

世界人類の敵!

とたちどころに罵倒されるのだ。

べつに、何かの政治風刺ではない。
ゴキブリの話である。

どこでも歩き回るゴキブリは確かに不衛生だし見た目も下品に見えるが、そこまで感情を込めて忌み嫌うほどのものかとは思う。

一度嫌いになれば、いくらでも欠点をあげつらいいくらでも嫌いになることができてしまう。
一度好きになればいくらでも美点をあげつらいいくらでも好きになることができてしまう。

べつにゴキブリに限った話ではない。

マスコミだってそうやって特定の個人を袋叩きにするし、そうかと思えば突然同じ人物を神格化して崇めてみたり。

マスコミというより、
人間がそうなのか?

こいつを叩け
って空気になれば人々は競って彼の過去から不名誉な話を集めてくる。

こいつを讃えろ
ということになれば、人々は競って彼の過去から名誉な話を集めてくる。
誰かさんがそうだったよね。

同じ人物だ。

同一人物をごく短期間に評価した直後に貶めることができる(もちろんその逆も)。
それはつまり、
誰でもよい面と悪い面を両方持っているということの証明になっているにすぎない。

同じ内容を良いことのように思うことも、悪いことのように思うことも、人間は両方ともできてしまうということか。

言いたくはないが・・・、

ゴキブリを食用にする人々も世界には存在するのだが・・・。

件のゴキブリ嫌いたちは、チームを結成してゴキブリ駆除に乗り出した。それ自体は普通のことかもしれないが、憎悪と嫌悪に満ち、作戦会議を打ち、薬物を調合し、罠を仕掛けと、敵意むき出しで戦いに意気込んでいた。彼らにその能力さえあればゴキブリのために核兵器の使用もミサイルの使用も躊躇わないという勢いだ。市販品を買ってくればすむ話だとは思うが、要するに

「我らのこの手で抹殺する」

という執念に貫かれているのだ。もちろん市販品ではだめだという屁理屈はいろいろ言っていた。いやその屁理屈は本当かもしれない。だとしても彼らは青春をかけて
ゴキブリと

戦いたい

のだ。
さながら彼らの闘争本能の捌け口としてゴキブリが選ばれてしまったかのごとく。
だから、核兵器やミサイルなんか使ったら我々だって死んじゃうよなんて冷静な意見はチキン扱いされるのだ。ゴキブリと戦って死ぬことそ栄誉なのだ。

そんな彼らの闘いを、
醒めた目で見ていようものなら、
いずれ

「お前、あのとき何も協力しなかったよな?」

となる。
ゴキブリファシズムだ!
竹槍を持って鬼畜ゴキブリ
と気炎を上げなければ
非国民、
じゃなくて
世界人類の敵
と見なされてしまう。

かくして
知識のある者はゴキブリ退治のためにその知識を提供しなければならない。
体力あるものはゴキブリ退治のためにその体力を提供しなければならない。
弁舌に優れた者は、ゴキブリ戦争の正当性の宣伝と、ゴキブリとの戦いの戦意の鼓舞にその才能を発揮しなければならない。
声の大きいものは、ゴキブリを罵り倒すためにその声を提供することが求められる。
暇のあるものはその時間をゴキブリ退治のために提供する。
金のある者はその資金をゴキブリ退治基金に寄付することが望まれる。

いや
そうじゃないんだ。

ある程度歯車が回り始めれば、
言われなくてもみな自主的に協力し始めるのだ。

ひとつは見栄と世間体。
競争心と虚栄心、偽善
あるいはそこにビジネスチャンスを見つける者もいるだろう。
失った信頼をゴキブリ戦争に貢献することで取り戻そうとする者もいるかもしれない。
ここは一旗揚げるチャンスと思う者。
知識を自慢するチャンスと思う者
勇敢さを見せつけるチャンスと思う者
ゴキブリ戦争への協力という形で社会とつながりたい者
そこに生き甲斐を見つけたい者
正義の実現を目の当たりにしたい者
正義の実現を体験したい者
愛する者を守った気分になりたい者
自分の不甲斐なさを責任転嫁する対象を探している者
合法的に暴力や破壊や殺しをやってみたい者
自分への批判をゴキブリにそらしたい者
自分の無力さ無能さを忘れたい者
何か熱くなれるものを求めている者
とにかく寂しくて「みんな一緒」感に癒されたい者
とにかく退屈していて刺激的で過激な事件を待望している者
ゴキブリを批判して正義の味方の気分を味わいたい者
愛する人のすることを応援したい者

そうやってみんな、
ゴキブリの周りに群がってくる。