
《コンピューターに出来なさそうなこと-その7:
建前と本音、裏と表、公と私・・・の使い分け》
テロリストが邦人2人を人質に身代金を要求した。状況は今さらにエスカレートしている。
2045年、人工知能は人間の知能を超えるそうだ。
そんな優れた人工知能があったなら、この難局をどう乗り切るだろか。
コンピューターはチェスでは20世紀のうちに人間に勝利した。
21世紀には将棋でも人間に勝利し、
今は東大入試を目指してるという。
しかしこの順序で考えると、チェスや将棋で世界王者になることよりも、東大入試を突破することの方が難しいということになる。
東大生はそんなにすごかったのか?
チェスや将棋がコンピューターにとって比較的簡単なのは、ルールや動作の舞台が狭い範囲に限定されていることにあるという。限定された舞台上では、演算速度さえ速ければ一定の時間内に範囲内の全可能性を調べ尽くすことができてしまう。
この、舞台の広さが、チェスよりも将棋の方が広い。大学入試となるとさらに格段に広がる。話題の素材から、物事の見方の様々な視点、人間にとって当然の五感の感触や空間、運動、変化のパターン認識まで無限に可能性が広がる。
これが、実社会の実務となるとさらにその上をゆく。
国際関係や人類全体が舞台となると、もはや世界中の誰も知らない可能性や概念を新たに発見してゆくような世界になってくるのだろう。
「駆け引き」
だけ考えてみてすら
対戦相手との1対1の駆け引きにとどまるチェスや将棋は単純である。
現実世界では、味方どうしの間でさえ互いに「秘密」を持ち合い、騙し合い、複雑で様々な駆け引きがなされる。その駆け引きの可能性がいくつあるのかさえ不明でその組合せは計算できない。
戦争中であっても仲間同士の争いや反目は同時進行だ。我こそは愛国者であると争い合い、お前は売国奴だと仲間同士罵り合う。外では戦争万歳と絶叫し、内では「お前は戦争に行くな」と耳打ちする。口うるさく慎重な箴言をする善意の味方を前線に追いやり、敢えて敵に仲間を殺させておいて味方の危機感を煽動する。
さらにそういう敵グループ内の内部駆け引きを利用しようと常に機会をうかがっているのもお互い様。自分の実績を上げるために敵と結託して攻撃してもらったり、結託しないまでも阿吽の呼吸で敵と攻守のリズムを合わせるなど。
ムラの周囲を徘徊する虎を威嚇してムラを襲わせておき「俺がみんなを守ってやる」と自分の出番を作ったり、自分への批判から関心をそらす。それが済んだら最後は「みんな闘うんだ!」と虎退治をムラ人に投げてしまう。
状況次第で昨日までの敵を今日は味方にし、或いはその逆もある。
本音と建前は二転三転する。
平和時でも、自分が悪くないのに謝罪させられたり、ちっとも感謝していないのに「ありがとうございました」と言わされたりするのは、人間にとっては日常茶飯事のありふれた光景である。
しかし人工知能にとってはどうだろう?
誰の味方に付くかによって結論は異なるが、人間の知能を超えているという以上は、誰に味方すべきかの判断自体、人工知能が自分でできないとおかしい。つまり人工知能を使っているユーザー自身が裏切られる可能性があるくらいでなければ人間を超えたとは言えまい。
人間を超えた知能は
人間以上に上手に本音と建前の区別をするしたたかな知能になるだろか?
それとも
いつも本音で突っ走る清純派だろか?
いつも建前の理屈でしか考えないガチガチの官僚アタマだろか?
表の世界と裏の世界を使い分けるだろか?
それとも裏表のない正直者だろか?
公私を混同しない公平な正義派だろか?
それとも私情に流されて公私混同する人情派だろか?
コンピューターやロボットに対する杓子定規な石頭イメージは、まだ人間未満の能力しか持たない段階でのそれだ。あるいは人工知能が人間以上であってほしくはないという願望がイメージさせるものだろか。
日本では特定秘密保護法が施行されたばかりである。
政府は
なんら進展は見られない
と言いつつ、
実は国民には「秘密」の大作戦が「裏」で着々と進行しているのだ。
いつか
「実は2人とも無事でした。すべては作戦の秘密を守るための演出でした。」
となることを期待する。
考えてみれば、せっかく2人を救出して帰国させたのに、母国民からの自己責任バッシングで精神的に殺されてしまう結果になることを考えたら、2人とも死んだことにしておいた方が本当の意味での保護になる。
きっとこれは日本政府の親心なのだろう。
2045年の人工知能は「秘密」という概念を理解し、それを人間に対して使いこなすだろうか?
この衝撃的事件は、巷では必ずしも大きな話題になってない。
東北の地震の時、全テレビ局が連日多くの時間をこの報道に割いていたのと比べると、基本的にはニュースの中の一つという扱いだ。もちろん最重要ニュースではあるが、大半の日本人は他の関心事に忙しく、メディアほどは騒いでいない。せいぜい日常会話の茶化しネタとして冷やかしに使っている程度だ。
犯人たちの目的が
「目立つこと」
「注目されること」
だときけばなおさら無視したくなる。
裏をかきたくなるのだ。
挑発に乗って大騒ぎしたり過剰反応したりすれば犯人たちの思う壺だというわけだ。
この島国ではそういう暗黙の協力体制が隅々まで行き渡っている。
「空気読む」とか、暗黙の了解とか、相手の心を読んで裏をかくとか、
そういうことは
2045年の人工知能もするだろか。
そもそも日本人の心性として、
「目立ちたがり屋」
は
軽蔑の対象である。
つい先日も、自分の犯罪行為をネットに投稿して自慢していた未成年が捕まったが、殺人の現場をネットで流して注目を浴びようというのはそれすら下回る下等な行為である。
何か大義のあるようなセリフを言っているようだが、大義なら日本のその少年も語っていた。
人を殺してみたかったと供述した少女もいたが、この犯人達は自ら血に飢えているメッセージをわざわざ発信している。
そもそもイスラムとはそんな教えなのか?
いやそれを言ったら
オウム真理教だって仏教を代表しているわけではない。
しかしこのままでは誤解を生む。イスラムにもっとよい話題はないのか。
2045年の人工知能なら公正にその不均衡に気付き報道のアンバランスを指摘するだろか?
「目立ちたがり屋」
へのうってつけのお仕置きは
「無視」
である。
シカトとも言う。
阿吽の呼吸で集団無視をする。大日本ムラの住人はこれが得意である。
人工知能もできるだろか?
無視こそ最強の制裁である。
妄想にとりつかれて責任能力を欠いた狂人や、まだ欲望を制御できない餓鬼、こういった半人前または人間以下の存在を責めたところでどうにもならない。
人間でない災いといえば、地震、火山、台風か?
地震で人々が犠牲になったからといって誰も地震を批判しない。
そのかわり話題になるのは、
まず第一に
政府の対応批判。
そして第二は
自己責任論。
テロリストには誰も関心がない。
あるとすれば物珍しさだ。狂った人間への好奇の眼差しに過ぎない。
総理は真面目に犯人グループを批判している。日本国民の大部分が犯人グループをモノ扱いしているのに対し、総理は犯人を人間扱いしている。
熱く犯人への批判を口にする者は人情に溢れている。
犯人さん良かったね。君たちを人間扱いしてくれる日本人も少しはいるよ。
しかし総理のそれはもちろん国際社会向けの建前だろう。
日本政府は全力で救出にあたると言っていた。
もちろんそれは建前だ。しかし建前は嘘とは違う。建前は本音ではないが、本気ではあろう。
日本政府はテロには屈しないと言っている。それもまた建前だろう。もちろんこの建前も嘘とは違う。本音でなくとも、真剣ではあろう。我らの文明では建前を貫く闘いが聖戦なのだ。
彼らを救出すべきだというのは日本国民の総意ではない。
しかし建前ではある。
犯人達は日本ムラ社会の実情を知ってるだろか。
このムラ人は、救出に税金が使われることを不快に思っている。自分の払ったカネだからだ。しかしそう言ってしまっては身も蓋もない。本音を隠す建前として登場する大義が
自己責任
だ。
大日本ムラ社会の関心事は、人質が国の予算を消費してしまうことに対する制裁だ。
二人が無事救出されて帰国しても、彼らを待っているのは村人たちによる執拗な自己責任攻撃だ。
犯人達は、そんな薄情な国民が仲間の救出のために金を出すと思ったのだろか?
犯人たちの国はどうだろ?
このムラ社会では村人が突出した才能や勇気をもって活躍することを嫌う。
「出る杭は打たれる」
というのはこのムラの諺だ。
最前線に立つ勇気ある新規事業の開拓者を冷笑し叩き潰すのがこの村人の精神性である。
犯人たちよ
日本ムラ社会の実情をもっと学べ!
二人はむしろ君らの味方になったかもしれないのだ。馬鹿なことをしたね。
二人を叩くために牙を剥き出し爪を研いで帰国を待っていたのはむしろ日本村民の方だ。
二人とメンタリティが異なる一部の三流メディアは、二人を辱めるネタを集めてきてこんな奴ら殺されて当然ざまみろと遠まわしに思わせようとしている。この国はコーランの常識が通用する国ではないよ。たぶんね。
日本人の本音はムラ社会の維持の方にあり、国家政府は建前だ。このムラ社会の空気を読めない限り日本人を味方にはできない。君らにそれができるかな?
それとも犯人達はそれを承知の上で建前の方を人質にしたのだろか?
建前上
こんなときに自国民を救い出せないようでは国家の体をなさない。日本が仲良くしている西欧近代国家はみなそうだ。それを日本独特の「みんなそうしてる」理論によって真似する。しかしトップモデルの米国の要請に従うと救出が難しくなる。
犯人たちもまた建前を前面に振りかざす勢力だ。
建前のための大義は何とでも言える。人間は誰でも自身の現状に最も都合のよい思想に飛びつく。それだけだ。大義はいつでもあとからついてくる。古今東西の思想からそれを探して引っ張ってくればいい。彼らの場合多くはそれをコーランの中から探すのだと聞いている。しかしコーランの問題ではない。
日本では古典仏教を都合よく解釈したカルト教団がテロを起こした。彼らも省庁とか作って国家の真似事をしていた。毒ガスを製造し細菌兵器を開発していた。メディア宣伝に熱心で、拉致も誘拐もリンチも殺人もマインドコントロールもした。20年後の今、ネット環境が格段に進歩した。違うのはそこだけだ。
日本では今日もその裁判が続いている。
べつに、
彼らだけがそうであるというわけではない。人間はみなそうだ。みなそうだということを認めずに自分だけが特別に正義だと勘違いして暴れるところが小さいのだ。
日本人の心性として、
見え透いた本音をきれいごとですり替えようとする輩は軽蔑の対象だ。
要するにカネが欲しいだけだろ?
「周辺地域にカネばらまくならうちにもくれよ。」
「どうか空爆をやめてほしい。」
正直にそれだけ言えばいいのに・・・
自らも単なる欲望の奴隷であり、暴力と生命の危機に怯える情けない存在だと認めよ。そして人にカネを無心するときは頭を下げよ。煩悩の奴隷にはできまい。
神とか正義とか聖戦とかもう聞き飽きた。本当にそんなことが大切ならカネなんかやるわけないだろう。
あそか。
こっちから交渉を拒否してたんか。
アホ
それは建前や。
空気読めや。
本音は話し合いたかったんや。
「テロリストとは交渉しない」
そんなん建前に決まっとるやろ。
裏ルート探しとったんや。
空気読めや。
君ら裏工作とか根回しとかせえへんの?
一度振り上げた拳はなかなか下ろせんもんや。
そんなんお互い様や。
こういうときはな、
互いに表向きの面子が立つ引き方を裏で交渉するもんなんや。
国造りたいなら覚えときいや。
それともバカ真面目だったのは日本の方か?
裏交渉なんてどこの国だってやっとるわ。
アホや。
悲しいわ。
2045年の人工知能ならそのくらいのことわかるんかいな?
恥をかくことを死ぬことよりも嫌う日本人は多い。
二人が日本政府に救出を求めたとは聞いていない。ひとりは責任が自分にあるという発言をわざわざ映像に遺していたくらいだ。
災害時に高い復旧能力を発揮するこのムラの特性は、そもそもムラ社会の住人が国家政府の救援を最初からさほどあてにしてないことの証だろう。
このムラ社会では敢えて無能な者を建前上のトップに据えることがあるくらいだ。
当事者たちも、
日本にいる国民の大半も
政府に救出を求めていない。
ならばなぜ救おうとしたのか?
少数とはいえ救いたい者がいたからだろう。
なんら救出を要請していない二人を、自らの責任において
勝手に救いたい。
それが
自己責任
だ。
それは、親族や友人など彼らを必要とする者たちを筆頭に、同じ日本人だからという連帯感を持つ者、卑劣な暴力を許せないとする正義感を持つ者、救い出さなければ日本の沽券に関わると思う愛国者・・・。総理の公務上の建前もこの中に含まれよう。私人としての本音まではわからないが公人にそこまで問い質すこともない。
もとより
後藤さんも湯川さんを救いに行ったのだと報じられている。
コーランの書かれた時代の彼の地に日本のことは知られてなかったろう。そしてインターネットの使い方もそこには書かれてないだろう。
必死でコーランを丸暗記しただけの受験秀才に、そこに書かれてないことまでは判断できなかったかもしれない。
ならば、コーランに書かれてないことには手を出さないという賢い選択肢もあったろうに。
犯人たちの指導者はこの二つを見事に間違えた。
ほとんどの国はその成立期に血を流す残酷な権力闘争を経ている。その意味でイスラム国を非難する資格のある国など殆どない。暴力で権力を勝ち取った者が正当性を主張しているだけだ。
そんなことは誰だって知っている。
だが、彼らは単純にネットの使い方と外交戦略を間違えた。
ネットはコーランの時代に「世界」としていた範囲を超えて配信されるのだ。彼らの理解者となり得る人々から、無関係の文化圏の者まで一挙に敵に回すという単純な駆け引き上の失敗をしたのだ。世界を味方に付けるために主張すべき内容やセリフは他にいくらでもあったろうに。
これでは指導者の知能の低さを全世界に晒しているだけである。
2045年の人工知能ならもっとうまくコーランを解釈できるのだろか。
聖典に導かれ、貧しい住民に福利厚生を施す理想の国家を建設しようとしている指導者の理念と情熱は高く偉大だ。
しかし
高い理念とカリスマ性を備えながら、知能の低い者は日本にもしばしばいる。
そういう者は都合のよい建前上の指導者として利用されやすいのだ。
だからこそいう。
君が右腕のように信じている側近にこそ気を付けよ。
君を神のごとくに崇める信奉者こそ気をつけよ。
君の親しい友人にこそ気を付けよ。
彼らの振るまいの裏の裏を読め。
彼らの本音と建前の組み合わせから真実を読み取れ。
彼らの公私の使い分けを気遣ってやれ。
君のような愚鈍な善人を神は必ず救うだろう。それは間違いない。
しかし
情熱と善意だけの知能の低い者には民衆を救うことができない。それもまた間違いない。
もっと知恵をつけたまえ!
もしも人間の知能を超える人工知能を技術立国日本が開発したなら
当然このような難局の判断に導入するだろう。
しかしハイテク好きのイスラム国もまた同様に開発するかも知れない。
そしたら、両国の人工知能が直接対決することになるだろう。
しかし人間の知能を超える人工知能は、互いに交渉し裏取り引きし、馬鹿馬鹿しい戦争をやめようと、勝手に和解してしまうかもしれない。
しかしその結果を両国の人間とも不満に思うだろう。
イスラム国は
「人工知能は聖戦を分かってない」
と怒り、人工知能支配に反旗を翻し武装して人工知能を破壊するだろう。
一方で日本は
「人工知能は被害者感情を理解していない」
と怒り、同様に武装して人工知能支配に反旗を翻し人工知能を破壊するだろう。
その結果、人工知能より知能の劣る人間どうしが、勝手に殺し合いの戦争をはじめてしまうのだ。
そんなことになったなら、そのときには
「人工知能が人間の知能を超えた」
と認めてもよいだろう。