
地震と文明6-陸上交通
すでに文明の発達した現代では、私たち人類は地形など全く無視して飛行機で目的地まで直進します。
飛行機以前には鉄道が遠距離交通に有効でした。
船はもっと古い時代から有効でした。
人類が徒歩で旅行や交易を始めた頃、主要な交通路すなわち道路はどこに開かれたでしょうか。
ひとつの象徴は、アルプス・ヒマラヤ造山帯に沿って延びるシルクロードです。
シルクロードはユーラシア大陸の東西を結ぶ歴史的な交易路です。
そして
アルプス・ヒマラヤ造山帯は
3つの地震多発地帯のうちのひとつです。
シルクロードがたまたま造山帯に沿っているのは、
もともと造山帯に沿って国や町や人口が集中していたから
かもしれませんので、
因果関係はどちらともいえません。
そこでやはり
正反対を考えてみることにします。
起伏の全くない平地と、
山地や山地に近い地域とで、
どちらが歩きやすいかです。
干拓と築堤が進み低湿地のほとんどが乾いた固い地面に生まれ変わった現代、
大型機械や大型車両が活躍する現代
では
確かに平地は開かれた便利な土地です。
しかし
問題にしたいのは
まだ自然が自然のままだった古い時代のことです。
徒歩や家畜による交通の時代、
山道が障害になる理由は現代ほど大きくありません。
日本で考えても山を挟んだ両側斜面が同じ方言や同じ文化圏であることは必ずしも珍しくありません。
むしろ大きな川や低湿地が文化を隔てる通行障壁となることが多くあります。
山道として最も採用されているのは尾根道です。
乾いて歩きやすいということの他に、
道として目立ちやすいので迷いにくいということもあると思います。
尾根上は目印として分かりやすく、しかも歩きやすいので
多くの人が通っているうちに次第に地面が踏み固められ草が低くなることで
自然に道になって行くというケースは考えやすいシナリオです。
また森林内は日光があまり届かないので外から見るほど下草が多くありません。
平地の場合はどうでしょう?
低地の湿地帯は歩けないから論外として、
まず平地林の場合ですが、
見通しが利かない平地林の中で方向を見失わないことは困難だと思われます。
砂漠の場合は命の危険があります。砂丘地帯だと風で道が砂に覆われてしまい道路として長続きしないことが考えられます。
残るのは平地の草原の場合です。
草丈が高い場合には自然に道ができることは考えにくいので意図的に草を刈り道路として維持管理しないと道として存続し続けることは難しそうです。
草丈が低い場合のみ通行可能と思われます。実際シルクロードの北には
ステップルート「草原の道」
が歴史的に存在します。ただし目印がないので山中の尾根道のような一本道にはなりにくそうです。
方向を見失わないためにはランドマークが必要です。歩きやすい草原でも広い平地の場合、道標となるランドマークが見つけにくいことを考えると山道か山の見える範囲内の方が適していることが予想できます。
山道として尾根道を代表させて考えましたが、
もう一つの道は山麓を結ぶ線です。
山地と平地の境界線ともいえます。
平地の縁にありながらやや高いので道は乾燥し、山に近いので目印もあり道に迷いにくい。
シルクロードにも、山麓のオアシス都市を結ぶルートとしてこのような道は多くあります。
地震多発地帯はプレート境界です。
陸域の場合、大抵そこに大きな山並みが形成されます。
こういう地形条件が交通路として適する様々な条件を与えることが、文明の発達に有利に働いてきたと考えられます。
