
地震と文明4-水資源
資源といえば水
水は大切です。
すでに文明の発達した現代では、我々人類は、
海水を真水に変えたり、
砂漠でさえ、地下深くから地下水を掘り出して灌漑することがあります。
しかし技術の未熟だった時代、そして現代でさえそのコストを考えれば、自然の恵む水は大切です。
エジプト、メソポタミア、インダス、中国
旧大陸の四つの古代文明は、四大河文明とも言われています。その大河は大量の水があるから生じるわけです。
もともと水資源が豊富な日本にいると、当たり前すぎて気付きませんが、水は大切です。
工業用水、農業用水、生活用水はもちろんですが、
地球上のどんな生物も水がなければ生きてゆけません。そして私たちの食べ物はほとんどすべて他の生物です。
そして私たち人間自身、飲用水がないと数日で生存の危機に陥ります。
その水の存在が地震と関係しているとしたら、二つを結びつけるものは何でしょう。
それはやはり
「山」
ではないでしょうか。
山の生活がキツくて生きてゆけないなどという生物は考えにくいですが、
水がなければ生存の危機に陥る生物というならほとんどすべての生物です。
プレート境界は地震の頻発地域です。
プレート境界は高く険しい山が形成される場所でもあります。
山と水資源との関わりを二つほど考えてみたいと思います。
一つ目は
降水そのものを促す役割です。
もう一つは
地表にもたらされた降水を集める役割です。
高い山の頂に雲がかかっている光景をよく目にします。
山が雲を作ることを、わかりやすく見られる光景です。
そして雨や雪は雲から降ってきます。
雲は空気中の水蒸気が凝結して生じます。
水蒸気の凝結は気温の低下によって生じます。
気温の低下は上昇気流による気圧低下によって起こります。単純化すると、
上昇気流→雲の発生
となります。
山が存在しない地域では、上昇気流は低気圧や前線や地表付近の加熱などによって起きますが、山が存在する場合は山も上昇気流の発生原因のひとつに加わります。前線面に沿って空気が上昇して雲を生じるのと同様のことが山脈によって起こります。山にぶつかった空気が山の斜面に沿って上昇するからです。
梅雨時に起こる西日本の集中豪雨は赤道付近の海域で蒸発した水蒸気が日本付近にもたらされる雨ですが、
それらの水蒸気はなぜわざわざ日本に来てから雨になるのでしょう?
日本までやってくる前に、途中の海で雨になって降ってくれたら、日本の集中豪雨は起きないはずです。
答は、それらの湿った空気が上昇気流になるのが日本付近に停滞する前線のところだからです。
水蒸気源は確かに熱帯の空気ですが、その水蒸気が雨に変わる場所が日本のあたりなのです。
、
水蒸気を雨に変える働き(上昇気流)には、
前線だけでなく、山脈も加わります。
山の存在も雨の原因になります。
純粋に山の存在が降水のきっかけになっている例としては冬の日本海側の豪雪があります。日本海側が豪雪になる気圧配置(西高東低)の時、低気圧は日本の東海上にあって、日本海沿岸部からはるかに離れています。この雪をもたらす上昇気流は、低気圧によるものでも前線によるものでもなく、山によるものです。
日本海で水分を吸った季節風が日本列島の山を越えるときに上昇気流になるものです。
アラビア半島は中緯度の乾燥地帯でほとんどが砂漠ですが、例外的に緑のあるパレスチナとイエメンは高山のあるところです。砂漠地帯であっても高い山のあるところでは降水が発生します。
エジプトとメソポタミアを結ぶパレスチナ地方はレバノン杉を産し、古くからの都市文明が栄えた聖書の物語の舞台です。
イエメンはシバの王国が古代から栄えていた場所です。
フェルガナ盆地という世界史の中心地があります。ここでいう中心地とは文明の十字路という意味でです。
名馬の産地として古代中国に知られていましたが、中国文明の西の端といえます。
しかしここは西洋文明の東の端でもあり、
インド文明の北の端でもあり、
北方の草原文明(あるいはロシア帝国)の南の端でもあります。
それぞれ時代ごとに東西南北のいずれかの文明がこの地方を支配下に置いてきました。
フェルガナ盆地はパミール高原の西麓にあります。この地域周辺(中央アジア)は海から遠く離れた内陸の乾燥地域です。
グーグルマップでこの地域をみると豊かな緑の土地であることがわかります。北西部に広がる砂漠から南東のパミール高原に向かってゆくと、途中で赤茶けた不毛の砂漠から緑豊かな地域へと突然変わる境界があります。
さらにパミール高原に向かうと険しく不毛の山肌からなる山地を経て真っ白な氷河地帯にかわります。
フェルガナ盆地を含む中央アジア各国の特徴です。ほとんど雨の降らない乾燥地域でありながらパミール高原の氷河の豊かな融氷水がこの地域に水資源を与えています。この地域の都市は山脈の麓に並び、オアシス都市となっています。この地域が中央アジア6カ国の人口集中地域であり、政治、文化の中心地となっています。パミール高原が6カ国もの国々を従えているように見えます。
世界的な大山脈であるヒマラヤ山脈は日本の気候にも大きな影響を与えていますが、
その西端のパミール高原とその周辺の高山帯が、これら六カ国を潤す水源になっているわけです。地図をみるとパミール高原を取り囲むように各国の首都(あるいは最大都市)が並んでいます。
キルギスタン、タジキスタンはそもそも国自体がパミール高原の西麓にありますが、北のカザフスタンの最大都市アルマトイは国の南部に、西のウズベキスタンの首都タシケントはフェルガナ盆地と山を挟んだ隣にあり国の東部に位置します。
南西のアフガニスタンの首都もパミール高原寄りの北東部にあります。
南のパキスタンとインドの首都もパミール高原寄りの北部にあります。
人口や国政の中心がパミール高原寄りに立地しています。
そのパミール高原(ヒマラヤ山脈も含め)の氷河はインド洋で蒸発し、季節風で運ばれた水蒸気がこの地域の高山に衝突して雲となり雪となって降ったものです。
中央アジアだけでなく、インダス川、ガンジス川、イラワジ川、メナム川、メコン川、長江などの大河、中国ウイグル地区のオアシス都市がパミール高原をはじめとするヒマラヤ山系を水源としています。
ヒマラヤ山系に水源を持つ川に潤されている国々という意味でなら、この他にネパール、ブータン、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、中国をあげなければなりません。
そして、乾燥地域を潤す大河という意味でなら、エジプト文明のナイル川、メソポタミア文明のチグリス川とユーフラテス川、インダス文明のインダス川、中国文明の黄河がまさにそれです。
もう一つは谷の発達
による集水作用です。
地表に降った雨は集まって川になります。
降った雨がそのまま土に染み込むだけでも植物を潤しますが、人間にとってはある程度まとまった水でないと利用できません。飲用水でさえそうですが、生活用水(バケツで汲めるくらいの水たまり)→農業用水(灌漑を成立させる程度の常に涸れない水)→工業用水と、文明が発達するほど大量の水(しかも真水)を必要とします。
人間が利用しやすい水は、湿地のようにただ漫然と大量に存在する水ではなく、ある程度特定の場所に集中していたり、流れのある水です。有効利用のために管理しやすいのは、水のあるところとないところのけじめが付くことがその一つです。人間は水の中で生きる生物ではありませんから、生活区域内には水が氾濫しては困ります。新鮮さや衛生上の給排水、制御しやすさのためにはある程度の流れがつくれることが好都合です。これについては次の記事で考察しようと思いますが、
初期人類にとって、あるいは現代でも野外で水の確保が必要になったとき、水源の見つけやすさというのを考えると、起伏があって谷がある地形です。川が見あたらなかった場合も、谷底に行けば川か沼か地下水がありそうだという見つけ方は分かりやすく、可能性も高いからです。平らな草原地帯でまとまった水を見つけるのはより困難であることが予想されます。