前記事のコメントで
ネタを提供していただいたので
もう少し続けることにします。
カリウム40は最も身近な放射性同位体です。
前々記事で述べた
「正しく恐れる」
の趣旨からすれば
過剰に不安を煽って
恐れてはならないもの
の代表例にふさわしいと思います。
理科年表をみると、
カリウムの同位体の存在比は
カリウム39が93.26%
カリウム40が0.01%
カリウム41が6.73%
となっています。
カリウム40は放射性同位体ですが、
その半減期は12.77億年と非常に長く、
安定同位体としても掲載されています。
カリウム自体は、
花崗岩などの岩石中に入っていますが、
海水や岩塩中にはナトリウムの30分の1程度(そのうちのさらに一万分の一がカリウム40)含まれています。
減塩食品に利用されることが多いので日常的に口にしています。
カリウム40は、ベータ線を出してカルシウム40に、さらに一部は陽電子を出してアルゴン40になります。
地球大気の成分として、窒素、酸素に次ぎ、三番目がアルゴン(二酸化炭素より多い1%)ですが、大気中のアルゴンは46億年の地球史の中でカリウム40が崩壊して少しずつ増えてきたものです。大気中の1%と言えばかなりの量です。
カリウム40が恐れる対象でないのは
①存在比が少ない。
②現在のすべての生物は、そもそもその環境下に適応して生き残った生物である。
③カリウム40は自然崩壊の法則に従って減少し続けている。
④カリウム40は半減期が非常に長いため質量あたりの放射能は小さい。
などの理由が考えられます。
①については、
カリウムの場合、同位体比でみる限り通常のカリウム一万個に一個の割合で放射性のカリウム40が含まれていることになります。
すべてが放射性同位体のトリウムやウランに比べれば圧倒的に微量ですが、前記事に書いた炭素14(一兆個に一個)に比べるとかなりの量といえます。
こういった存在比は自然界ではもともと決まっていますが、
原発事故や核実験で新たな放射性同位体が放出されれば当然変化します。
しかし核分裂生成物として生成する核種の質量数の2つのピーク(95前後と140前後)からは大きくはずれているので福島事故での放出はほとんどなく、
存在比の増加はほとんど考えられません。
以上よりカリウム40の被曝はほとんど恐れる必要はなさそうです。
②については既に述べた通り、
カリウム40は自然界にありふれています。
地球大気中のアルゴンはカリウム40が崩壊して生成されたもの(アルゴン40)と考えられています。
ということは
その分カリウム40は減っていることになります(新たなカリウム40が生産されない限り)。
アルゴンは大気成分中第三位を占める気体ですから、それがいかに身近な存在かわかります。
前々の記事で書いたとおり放射性物質は必ず減少傾向にあり、カリウム40も減り続けています。
要するにカリウム40は過去にはもっとたくさんあった(半減期から計算すると地球生命誕生時には現在の4倍あったことになります)ものの、半減期に従ってかなり減少し、現在がもっとも少ない時代になるのです。
このことは他の放射性同位体についても概ね同じで(前記事で挙げた炭素14は例外で毎日宇宙からの放射線により新たに生産され続けている)、
地球上の生物はみな、過去にはもっと大量の放射線を浴び、その中で進化し、生き残ってきたことになります。
カリウム40は私たちにとって太古の昔から馴染みの放射性同位体です。
③について。
既に述べた通り、カリウム40は減少し続けています。といってもその半減期12.77億年は非常に長く、人間の歴史時代くらいの期間で見れば一定といって差し支えなく、冒頭に挙げた同位体比はその値です。
カリウム40は、前記事に書いた炭素14同様、地質学上の年代測定にも使用されていて、古い時代の火成岩の生成年代の測定に使われています。
こちらの世界でもメジャーな放射性同位体です。
④について。
半減期の曲線から計算すると、カリウム40が1グラムあれば、毎秒26万回ほど電子を放出する(ベータ線)計算になりますが、カリウム40は一万個に一つしかないのでふつうのカリウムだったらその1万分の1で、毎秒25個程度です。海水中での濃度を考えて計算すると、海水1グラムあると百秒に1個電子を放出する程度になります。
半減期8日のヨウ素131で計算すると同じ質量あたりでカリウム40の
180億倍
になり桁違いです。もちらん微量なら問題ないことに代わりがありません。
半減期30年のセシウム137だとカリウム40の
1240万倍
になります。
放射能の値(ベクレル=回/秒)は、半減期が短いほど大きくなります。半減期の長いカリウム40は放射能自体かなり小さい値になります。