
新宿の西口側に
福豊というラーメン屋
があります。
何年か前、この店には
豆乳担々麺
なるメニューがありました。
私はこれが大好きでした。
もともと担々麺は好きでした。
ラーメンの究極形だと思っていました。
いやそもそも
ラーメンと担々麺は
別の食べ物かもしれません。
とにかく
辛い担々麺と生ビール
という組み合わせは
最高です。
ある日、
豆乳担々麺
というメニューが
新たに登場しました。
これは旨そうだと思いました。
担々麺の辛さに豆乳のまろやかさが加わった奥行きの深い味なんだろう。それが
牛乳だったら違和感があるが
豆乳なら豆腐は中華や和食で馴染みの素材です。
実際注文してみると
予想以上の旨さでした。
豆乳の臭みは担々麺の強さに完全に打ち消されながら、担々麺の辛さや旨味と豆乳のまろやかさは喧嘩せずに重なり合って共存しています。
実は、
自分が大の豆乳担々麺好きだ
ということに、
自分で気付いていませんでした。
いつも
時間をかけてメニューをみて
迷いに迷ってから注文していたから、
店のいろいろなメニューを食べているつもりだったのです。
ところがあるとき、
まだメニューをみる前から、
「ビールと豆乳担々麺でしょ?」
って中国人店員から言われました。
「なんで!?」
って聞いたら
「だってお客さんいつもそれしか頼まないじゃない!」
そんなバカな!
しかし言われてみれば、
昨日も
一昨日も
そうでした。
時間をかけてメニューを見て
優柔不断に迷いあぐねていたから、
頭の中では
すべてのメニューに対して
「みんな大好き!」
って思っているつもりでした。
だけど、実際は、
さんざん迷った末の最後の結論は
いつも必ず
豆乳担々麺
になっていたのです。
自分で気付いてなかったなんて!
それから
この店員さんとは懇意になって
いろいろな世間話をするようになりました。
彼は大学で勉強しながら働いている留学生で、
国に帰ったら商売やりたいなんて話もしていました。
ところで
しばらくこの店に行かない期間があった後
久しぶりに豆乳担々麺が食べたくなったので行ってみました。
すると、
メニューのどこを探しても
豆乳担々麺
がないのです。
豆乳担々麺が食べたくなったからこそ、
この店に来たというのに・・・
それで、
店長の女性にきいてみると、
あまり売れなかった
とのことなのです。
そんな・・・!
あんなに美味しかったのに、
人気なかったなんて!
好きだったのは自分だけ・・・?
私の好きなものは
みんなの嫌いなもの!
みんなの好きなものは
私の嫌いなもの!
私の人生はいつもそう!
人間として生まれたら、
みんなと同じものを
好きにならないと
いけないの?
さらに店長によると、
「豆乳」のイメージが先入観となってなかなかお客さんに受け入れて貰えなかったというのです。
健康食ブームだからといって、
もともと健康志向の人はラーメン屋にはあまり行かないのかもしれませんね。
確かに!
その後、
留学生店員は帰国し、
店長も替わり、女性店長らしい発想も店の雰囲気も消え、
味もフツーのラーメンになり、
店そのものフツーのラーメン屋になりました。
もう、自分の好みの味ではなくなってしまったのでこの店にはあまり行きませんが、
客の入りは増えているようなので今の味の方が多くの人の好みなのでしょう。
少数派の気持ちも考えろなどと言うつもりはありません。
少数派はいつも虐げられるなどと言うつもりもありません。
「私はあなたが好きだった」
と言いたい。
現在豆乳製品は広く受け入れられるようになりました。
あの店長は先見の明があったと思います。