昨年暮れからずっと左肩が痛くて、年始に病院に行ったら、椎間板が縮んで神経を圧迫しているんだとの説明。
これ、なかなか痛い病気なんです。

でも前向きに考えてみます。いま私は
自分がなってみて初めてわかる新しい世界を体験しているのです。

それは、お年寄りの気持ち。あるいは高齢者、弱者の立場と言えばいいのでしょうか。

そうです。

若くて健康なうちは絶対にわかりません。自分がそうだったから断言できます。
お年寄りをいたわりましょう
なんて、そんな標語くらい今までだって知ってましたよ。
でも頭でわかるのと実際自分がそうなるのとは全く別。

ときどき、横断歩道や、駅の改札口を、信じられないくらいゆっくり(本当にカタツムリくらい、止まったまま動いてないじゃんってくらい)歩いているお年寄りがいます。

ゴメンナサイ!
正直に白状します。

今まで
心の中でこう叫んでいました。
「どけ、クソジジイ!邪魔だ!」
「お前なんか、はねとばしたってどうせなにも起きゃしねーよ。」

でも今は・・・

はい。そうです。
私がそうなりました。

そうなんですよ。
ホント動かせないんですよ。どうにもならんのですよ。


その体験は、まだ病院に行く前、病気だとも思わず、たいしたことないだろうと思っていた頃のこと、ある講習会に出たときのことです。

それは簡単な工作の一過程で、ウレタンバンドの先端を火で炙って溶かして繋げるという単純な作業。
手先の器用さには自信があるからこういうのは大好き。
でも私の手は途中で停止してしまったのです。
溶かしてくっつけた後、火から離して冷やさないと固まりません。このとき両方のウレタンバンドを持つ二本の手に加える力を一定に保ちバランスをとりながら後退させないとせっかくくっつけたところが崩れてしまいます。その微妙な力加減が肩の痛みのせいで全くできなかったのです。
先生はしびれを切らして、

「早く!早く火から離して!早く!離さなきゃだめ!溶けちゃう!溶けちゃう!早く!早く!」

最後は怒鳴り声。

努力はしましたよ。
でもちょっとでも動かすと力のバランスが崩れてしまって動かせないんです。
それでも、少しずつ、カタツムリのスピードでもいいからと思ってなんとかかろうじてゆっくり動かしていたつもりなんですって!
でも先生の目には止まっているように見えたんでしょう。
そうだと思います。
時計の短針が動いているように感じる人なんかいませんから。

はっきり言ってこの痛み、気力さえ萎えますから、先生をあわてさせて悪かったななんて気持ちさえどーでもよくなってくるし、人の事情も知らずに怒鳴るなんてひどい先生だなとさえ思わない。そういうデリカシーさえアバウトになってどうでもよくなります。
お陰で先生を怒らせた後も、悪びれることもなく図々しくいろいろわからないことを質問させていただきました。


いちばん痛かったとき、本当につらかった。身体を動かすと痛みがビリビリくるから、
ゆっくり、ゆっくり、
身体に振動を与えないようにそっと動かしていました。
おそらくそんなときおやじ狩りに遭ってもされるがままです。抵抗する気力さえありません。事実、ちょうど最も痛い頃、犬に噛まれたのですが、さほど痛いとさえ感じませんでした。

若い頃、健康で頑丈だったからいけないんです。長距離やってました。放課後のトレーニングで30kmくらいで走ることもありました。
全校登山で一日かけて登るような信州の山に放課後の部活の時間内に走って登って帰ってくる。
最初は信じられなかったけど先輩の後に着いていったらできちゃった。
登山のプロは山をなめないから重装備で万全の体制で山に入るけど、ランシャツランバンの軽装で可能なのは短時間で帰ってこられる走力があるから。
こういう力が付いてくると次第に自由を感じるようになってきます。
日本中どこだって、山の上だって、行きたくなったらいつでも自分の足で走っていける。大空を自由に飛ぶ鳥のように、いつでもどこへでも行ける自分の能力に酔っていました。実際、自転車でサイクリングを楽しむのと同じく、いえ自転車で行くよりも遠くへ、よく探検に行きました。自分の二本の脚で。

だから、
足の遅い人が信じられない。
貧血でホームから落ちる人が信じられない。
赤信号に変わってもまだ横断歩道にいる人が信じられない。
自分の体くらい自分でコントロールできないの?しょうもない奴ら!

強くなればなるほど弱者に対して冷酷無慈悲になってゆく自分。


先日夜道を歩いていたらバスから降りてきた腰の曲がった老人をみた。
じいさんは、バスは降りたもののそのまま歩道で止まっていた。
前につえを突き腰を大きく曲げて、本当にカタツムリの格好になって動かず歩道をふさいでいる。

いいや違うんだ。

今ならわかる。
今なら俺にもわかる。
爺さんは止まってなんかいない。
前に向かって歩いているんだ。
ゆっくりだけど、
少しずつ
ゆっくりと、
前に進んでいるんだよね。
爺さん!
俺も同じだよ。

昔の俺には見えなかったが
今の俺には見える。
じいさんが歩いている速さが!
じいさんはちゃんと前に進んでいるんだ。
そうだよね。
じいさん!

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