若鶏の唐揚げ 36
以前、と云っても七、八年ほど前のことであったが、
ぼくは、毎晩のお酒の肴に、ある料理に入れあげてい
たことがある。
それは、ふとしたことから、とある会社の忘年会に招
かれたことが、事の起こりである。
とある会社と云ったが、会社には間違いないが、社長
と従業員あわせても、片手でまいあうような零細会社で
あるが、この会社の社長と言う方は、県外から来徳した
苦労人で、どうゆうわけかぼくを贔屓にしてくれたのであ
る。
忘年会と云っても、会社の事務所でおこなうので、決し
て盛大なものではないが、実は、社長の実家が魚屋なの
で、社長じきじきに市場で魚を仕入れてきて、これまたじき
じきに料理をしてくれたのである。刺身はもちろん、焼きサ
ザエや焼き牡蠣などもあったが、いちばん美味しかったの
が鰤大根であった。これほど美味しいものがあるのかと驚
愕し、それ以来、ぼくの晩酌の肴は鰤大根が定番となった。
そして五年ほど、一日も欠かさず食べ続けたのであるが、
今は思うだに身震いする。つまり、もう飽きたのである。