粕汁 387
読書は、盛夏や初秋は不向きである。なぜなら、
盛夏は、文字どうり盛夏なるゆえに暑いのがどうり
で、読書どころではなく、ましてや午睡さえ不向きと
言わざるをえない。
これが初秋ともなると、気候もよくすがすがしいの
だが、蚊という忌々しい奴が出没して、読書や午睡
を邪魔することこの上ない。
晩秋になると、さすがに蚊も死に絶えたのか姿を
みせず、いよいよ読書の季節の到来である。
しかしここに難題が発生するのである。
気候もよく、蚊もでず、読書にはうってつけの時期
なのだが、読書に適する季節は丁度、午睡にも適す
る季節で、両方が並び立たないのである。
これには困った。対立物の統一、という弁証法でな
んとか解決がありはしないか。
何かを手に入れれば、何かを失う。これこそは世の
習いなのだ。盛夏の暑さと、初秋の蚊の攻撃を排除
し、かつ、おだやかな読書と、すこやかな午睡を両立
するのは断念するしかないのか。