雪だるま 95
空をみてしばらく梅を忘れゐる 森 澄雄
長崎の古賀さんより本が届いた。原田大六著の万葉革命・古代日
本の鏡上、という本である。
古賀さんは、東京の下宿の隣の部屋の住人であった。ぼくより一
歳年上であるが、ぼくと異なり人柄もよく、はるかに聡明な人だ。
古賀さんは、大学を卒業すると、下宿を出て、また別の学校に入
ったらしいが、ぼくとは、そのへんで音信が途絶えた。
それから数年が経過し、ある日、どうして電話番号を調べたのか、
電話があった。なんと、郷里の長崎のスナックからの電話であった。
背後の喧騒が受話器からも伝わったが、本人もほろ酔いらしく言
葉が弾んだ。
それ以来、年賀状をやり取りしたり、お薦めの本などを送付してく
るようになった。
その中で一番のお勧めが原田大六の著書である。
ぼくは、知らない名前であるが、その道では高名な存在であるらし
い。その道とは、古代史である。邪馬台国がどうのこうの、と言う世
界である。市井の学者らしく、一匹狼だそうであるが、アカデミズム
の世界の学者をバカあっかいにしているという。いかにも古賀さん
好みの研究者である。古賀さんもそういった一面が垣間見えること
があった。自分を応援するように、原田大六師を贔屓しているのか
もしれない。