柿一個 742
倒れたる案山子の顔の上に天 西東 三鬼
マルクスは、各段階の社会は、それぞれ固有の経済的矛盾をもち、
それによって世界史は進展する、と喝破した。つまり、封建時代は封
建社会なりの、資本主義社会は資本主義社会なりの経済的矛盾を
内包し、それによって社会はゆり動かされ、やがて崩壊してゆく。これ
がマルクスの図式なのである。彼は、資本主義社会についてまでこれ
を述べ、資本主義社会における経済的矛盾の展開と、それによる資
本主義社会の運動法則については、実際にこれを分析してみせてい
る。
商品は、二重性をもつ。人間の欲望を満たす、使用価値と、商品と
商品をやりとりする交換価値である。この交換価値を一般化したもの
が貨幣である。貨幣は、もちろん資本主義社会以前にもあったが、貨
幣が社会全体に十全に発達したのは、資本主義社会になってからで
ある。貨幣こそは、資本主義の象徴である。
商品の一般的流通こそ資本主義社会の基本構成であり、貨幣は交
換価値の一般化であるから、すべての商品は貨幣に恋をするように
なる、そして、この恋路はなめらかではない、のである。
マルクスはなかなかの美文家で、すべての商品は貨幣に恋をするよ
うになる。そして、この恋路はなめらかでない、なんてね。