柿一個 740
暮れ残る豆腐屋の笛冴えざえと 中村 草田男
なんですね、くさくさした時は、どこでもいいから旅に出たいで
すね。ぼくは、あまり旅行をしていません。出不精というんです
か、出かけられないわけなどありませんのに、あまり外国は云う
におよばず、国内もほとんど知りません。いたって行動派ではな
いのです。四国も愛媛は行ったことがないですね。
北国は、全くだめで行っていません。学生の頃、赤羽に親戚が
あったので、たまさか行きましたが、赤羽駅に北のほうから来た
汽車の屋根に沢山の雪が積もっているのを見て、太宰や賢治を
おもいおこしました。でも行ってみたいとは思いませんでした。
そのころは、今と違って東京が一番面白い都市だったからです。
特に、新宿が面白かったです。新宿駅ではフーテンとよばれる人
たちがシンナーを地べたに座って吸っていました。
土曜日になると、西口広場で反戦集会があって、よく行きました。
岡林の友よ、なんかがよく歌われていましたが、ぼくは、どちらかと
いうと、唐獅子牡丹のほうが好みでしたから、東映のヤクザ映画の
ほうが好きで、高倉健や鶴田浩二、池部良、菅原文太なんかに熱
い声援を送っていました。今となっては懐かしい話ですが、それで
も、つい昨日のような気がいたします。熱い時代でした、とても面
白い時代でした。もうあんな時代は来ませんね。