柿一個 735
秋といふも人間といふもうら淋し 三橋 鷹女
人間の一生は長いねー、とも、あっという間だよね、とも両方と
も真実である。主観だからみんな本当のことなんである。
人生が長く感じた方は、そんな生き方をしたのであろうし、短い
と思ってる人は、その人もそんな風に感じる生き方をしたのであろ
う。
両者の人生観の差異はなぜおこったのであろうか。
人生が長く感じた人は、のんびりとたゆたうように、一歩いっぽ
歩くように生きてきたと云えるし。短いと感じる人は、せかせかと、
他人の何倍も仕事をこなしてきたのだとも云える。
そんことではなくて、満足度の相違によるものかもわかなない。
死を前にして、自分は良く生きた、もう思い残すことはない。生
きて満足である。わが人生に悔いはない、と思える人は、人生を
長短、どっちに感じるのであろう。反して、まだ死にたくはない、す
べきことが沢山し残している。今は死ねない。もう少しでいいから
時間がほしい。死ぬのはいやだ、無念だ、なんてもだえ苦しんでい
る人は、どうなんだろうか。やはり短いと思っているのであろうか。
生まれたばっかりに死ななくちゃならない。生まれてこなけりゃ死
ななくてもいいのにな。だが、生まれていなければ、美味しいもの
も食べれなかったし、小津安二郎の映画も観れなかったし。音楽
も聴けなかったし。チャンドラーの小説も読めなかったし。嫁はん
と結婚もできなかったし。まあ、いやなこともあったけど、そんなに
悪い人生でもなかったので、一回ぐらいなら死ぬのもいいか!