豚のしっぽ 605
ぼくの生活条件として、なんでもないことは流行に従がう、
重要なことは道徳に従がう、芸術のことは自分に従がう。
小津 安二郎
小津安二郎の偉大さを発見したのは、日本の大衆である。そし
て外国で、はじめて小津映画を評価したのは、なんと意外にもイ
ギリスの映画批評家たちだった。フランスの小津発見はイギリス
よりも六年おくれたのである。
ご存知のように、黒沢や溝口は、小津よりずっと以前に高名な
賞などを受賞し、名は夙に流布されていたが、小津は日本では、
映画界のみならず、芸術院会員として尊敬をほしいままにしてい
たが、その作風があまりにも日本的だったので、外国では理解で
きぬであろうとささやかれていたが、1963年、小津が亡くなってか
らしだいにヨーロッパ、特にイギリスの批評家から評価がおこり、そ
れがヨーロッパから北欧、そしてロシアまで広がり、現下では、アメ
リカは有に及ばず、世界中の映画フアンが熟知する大監督である。
小津作品は、一見実に日本的のように見えるが、カラーの映画に
観られる色彩は、外国人にはあたかもモンドリアンの絵画のように
見えるらしい。小津監督は赤色が大好きで、赤のポット、消火器な
ど、意図的に赤を多用している。また女性の着物柄なども見ていく
と面白くチエックの柄を多用している。小物もモダンなものがおおく、
一輪挿し花瓶などは、小津さんの持ち物らしく、おなじ花瓶が複数の
映画に出てくるのを見つけるのも楽しみである。
小津監督の作品は飽きない。底が深いのである。一度観て、わか
ったような気持ちで、何年か経過して再観すると誤解をしていたこと
に気づくことがよくある。小津監督は伏線をよくしているので、それに
気づいていないこともある。観るたびに発見のある映画である。