星座と檸檬 465
もう初夏といってもいいのではないか。誰も決めぬ
なら、ぼくが初夏と断定する。初夏だ。
ぼくが知悉している夏は、郷里の徳島と東京、さして
大阪である。東京の始めての夏は恐ろしく暑かった。
夏休みは帰郷せずに、新宿の伊勢丹の倉庫でお中
元の品の包装と配送のアルバイトをした。なにも分か
らぬままに油の担当になったが、夏だと言うのに油の
配送がかなりあって忙しい思いをした。仕事で疲れた
ので帰りに友人と、新宿で天丼の美味い店があった
ので、食べて帰ろうとしたとき、互いに相手が奢ってく
れると早合点をして、二人ともお金がなかったのに気
がつきあわてた。
部屋に帰っても、ふとんが暑くてふうふういいながら、
それでも疲れていたので、汗をかきつつ眠った。
大阪の夏も暑かった。むろん涼しい夏なんてありはし
ない。夏はずうっと暑いと決まっている。大阪夏の陣も
暑かっただろう。鎧を着ての夏とは酷いものであったろ
う。戦争どころではなかったであろう。
そのてん、わがふるさとの夏は快適そのもので、周り
が田んぼと言うばかりでもなく、エアコン、冷蔵庫なども
あるし、パンツで太い、いや失礼、大の字になって寝て
いても誰憚ることもない。蝉の鳴き声が眠りを誘う。