_ 四字と熟語 173
毎日が心躍る日々ならば、さぞや愉快かつ充実した生活
だろうと推測するのであるが、片方でそんなことがあるものか、
と言う否定の気持ちが頭を持ち上げる。傍目にはいかような
派手々しい生活も、当人にとっては日常の生活に過ぎず、欠
伸の出るような退屈な生活やもしれない。
柳田國男が発見した概念、ハレとケをもちだすまでもなく、
繰り返し繰り返す、退屈な日常たるケに対し、お祭りや儀式
のような非日常たるハレ。ぼくらの生活を省みるまでもなく、
遥かに遠いご先祖様も、中身の違いがあれども、ハレとケを
送ってこられたのだ。現下のような豊穣な娯楽にあふれた社
会よりも、ささやかな娯楽しかない、古の社会のほうが娯楽
の感動が大きかった。
本年はオリンピックの年らしいが、かすかに脳裏の底にあ
る、異国より送られてくる、雑音の多いラジオ放送に、聞き入
って手に汗を握った記憶はある。
近代社会と言うものは、欲望の坩堝とあまたの娯楽があ
ふれている社会である。それが進歩であるなら、進歩とはは
なはだ退屈な社会だ。ハレとケの区分があいまいな社会は、
畢竟人間にとって、居心地のいい社会なのだろうか。長い
々日常の後訪れる、非日常こそ桃源郷なのではないか。