_ 矍鑠と重畳 89
以前ブログにも書きましたが、新町橋の時計屋によ
って買い物をし、ぶらぶら徳島駅前を散策しながら、行
きかう人とすれ違いながら歩いていると、昔汽車通をし
ていたころを思い出した。
こんなことがあった。徳島駅の向かって左手側にぽ
っぽ街と言う名の狭い商店街がある。ある朝、この近く
の職場にいくために歩いていた。ぼくの前にも何人かの
人がのんびり歩いている。そのなかに大男の老人に目
がとまった。その老人の後ろ3メートルぐらい後から小柄
な老婦人がゴマの付いたバッグを重そうに引いていた。
ぼくの足のほうが速いので、抜きざまにちらりと老人の顔
を覗けば、なんと、のらくろの田川水泡だった。のらくろで
わからなきゃ、サザエさんの長谷川町子の師匠だ。とする
と、後から付いてくる老婦人は、奥さんの高見沢潤子であ
る。あの文芸評論家の小林秀雄の妹である。
わぁすごい、ぼくは心が躍った。誰かに言いたい。しか
し、冷静に考えれば、ぼくの職場のだれも田川水泡も小林
秀雄も、ましてや高見沢潤子の名を知っている奴なんかい
ない。とほほ