驟雨と毬 7
朝~!はごぞんじ、谷岡ヤスジだ。あんなスゴイ
漫画家はあああああ知らない。ストーリーなんかど
うでもいい。牛が後ろを振り向き「もんくあっか」と言
うだけでゲラゲラ、バター犬が舌をハアハアするだ
けでワハハハ、にわとりが「アサー」と言うだけで腹
をかかえる、描く線が雑なようでそうではなく、エも
言われぬ味わいがあり、さながらマチスを思わす。
泉下の住人となり久しいが、ぼくは時々ふっと思い
浮かべてしまいニンマリ一人笑いをしてしまう。赤塚
不二夫もすごいが、谷岡ヤスジの描写力には一歩
及ばぬ。
ぼくは以前事務職をしていたが、仕事に飽きたとき
机に敷いた透明な何とか云うモンの下に三枚のコピ
ーを挟んでしばし眺めていた。一枚は岩崎ちひろの
子供の絵と、つげ義春のねじ式の扉の絵、それに
谷岡の牛が振り向いた絵だった。それぞれの絵に疲
れをいやされたが、とりわけ谷岡の「もんくあっか」の
牛の絵はアナーキーな不思議なエネルギーをかもしだ
し、些細なことで悩んでいたぼくの心をせせら笑ってく
れたのには助かった。そんな力が谷岡の絵にあった。
今では思い出すことは少なくなったが、谷岡氏への哀
切の念はあふるるばかりだ。
岩崎ちひろ先生、つげ義春先生、そして谷岡ヤスジ
先生ありがとう。朝~!