独り言   3月2日 | はなのブログ

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        猫と柳   1

 雨の降る品川駅は中野重治だった。

  辛よ  さようなら

  金よ  さようなら

  君らは雨の降る品川駅から乗車する

で、はじまる中野重治の詩を読んだのは二十歳のころ

だった。岩波文庫で★いっこの50円だった。買ったの

は渋谷の文献堂だったと記憶している。

 それまで中野重治は歌のわかれや、むらぎもの作者

である小説家だと思っていたが、詩集を読んで本質は

まぎれもなく詩人であることがわかった。

   歌

  お前は歌うな

  お前は赤ままの花やとんぼの羽根を歌うな

  風のささやきや女の髪の毛の匂いを歌うな

  すべてのひよわなもの

  すべてのうそうそとしたもの

  すべての物憂げなものを撥き去れ

  すべての風情を擯斥せよ

  もっぱら正直のところを

  腹の足しになるところを

  胸先を突き上げて来るぎりぎりのところを歌え

中野重治を時々読み返し、自分の狡さを考えてみよう。