流転と啓示 16
マルクスの思想、学説に対する大いなる誤解がある。
その最たるものが疎外の定義ついての誤解だ。マルク
スが疎外という言葉を以て説いた事は、社会現象には
法則制が在るという事である。経済のみならず、社会や
歴史にも一般化可能な法則が在り、これらは自然科学
における諸法則と同様、人間が勝手に操作したり支配
できるようなものではないーーというのが疎外の本質で
ある。
しかし、多くのマルキストがそれを理解できなかった。
ソ連の指導者も然り。マルクスが警告したにも拘わらず。
法則を悉く無視して社会や市場に様々な命令を下してき
た。結果は周知のとうり。ソ連崩壊と共に無用の烙印を
押されてしまった。それはマルクス自身の限界もあった。
マルクスは大事な事を見逃していた。資本主義の形成
には何が必要かーーと言う事である。技術の進歩、資金
の蓄積、商業の発達。この三つが基礎となる事は、マル
クスも理解していた。しかし、どんなにそれらの条件がそ
ろっていても、それだけでは資本主義は形成されない。近
代資本主義の萌芽に欠かさざる第四の条件、それはマッ
クス・ヴェーバーが指摘した資本主義の精神である。
つづく