白河夜船 31
子供の時、ぼくは泳ぎは吉野川で覚えた。泳
げるようになったのはたしか小学4、5年生のこ
ろだった。夏休みはほぼ毎日朝から夕方まで泳
いでいた。昼食はどうしていたのだろう。記憶が
ない。だがなんどか近くのスイカ畑から失敬した
記憶がある。いいスイカは出荷してるのでクズ
だったが、美味かった。冷やして食べる気持ち
のゆとりがなかったので生温かかったけれど、
悪いことをするスリルと冒険心に大人に近づい
た気分だった。
食べるあてもないのにフナを突いて遊んだ。
じゃかごと言う、石を針金で編んだ隙間に水中
メガネで覗くと大きなフナがふらふらと漂ってい
る、それを銛でつくのだ。刺さった瞬間の手ごた
えがたまらない感触である。
夏休みも終わりに近づき、しだいに川で遊ぶ
子供たちもへり、何人かの高学年の不良の遊
び場になる。ついこの間の喧騒はどこえやらで、
変声期をむかえた男の子たちの女性徒の噂話
にはながさく。美知子や妙子はいまやいずこ。
少年たちの夢は入道雲の彼方に消ゆる。