白河夜船 10
ぼくは外国にいった経験がないせいかナショナリ
ズムの感覚がよくつかめなくて、音楽で言えば演
歌歌謡曲は違和感はないがなぜかなじめず、ポ
ップス・ロックの日本版は全くといっていいほどダ
メで、底のあさい弁当もしくはばったもんのブラン
ドと言った感じで、聴く耳をもてなかったのである。
だから聴くのはニール・セダカ、ポール・アンカ、
コニー・フランシス、クリフ・リチャード、ロネッツ、
リトル・ペギーマーチ、プレスリー、ボビー・ビント
ン、カスケーズ、プラターズ、レイ・チャールズ、ト
ロイ・ドナフュー、ガス・バッカス、ジヨニー・ティロ
ットソンそしてビートルズのドーナツ盤を宝物のよ
うにして聴いていました。ぼくはいつも不思議な心
にとらわれ、何故に外国の音楽がカッコいいの
か、どうしてぼくの気持ちがこれらの音楽に反応
するのか理解できませんでした。
それから数年経過し、当時ぼくはJAZZに夢中
になっていました。
ある日クラスの女の子から声をかけられ、学校
の近くの彼女のアパートへ友人と二人招待された
のです。そのときコーヒーをいただきながら、彼女
プレイヤーにレコードをのせて聴かせてくれたのが
サデステック・ミカ・バンドのタイムマシーンにお願
いでした。ぼくは彼女のセンスの良さに唸りまし
た。この女にしよう、と。ぼくは思いました。しかし、
彼女も心のなかで決断していたのです。この男に
しよう、と、その男はぼくではなく友人のほうでし
た。