ふらふらの記 4
戸を左に引くと、
「おるでー」
Tが言った。
「はあーい」
と、50すぎの女が顔をだした。
「まっちょったんでよ。さあさあはよ上がって」
女は笑みを浮かべてぼくらを促し、ぬいだ靴をそろえている。
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[ええ娘ばっかりでよー」
と、手をすりあわせ、女はぼくたちをべっべっの部屋にあんないした。
「ちょっと、待ってな」
と、浪速千恵子のような笑顔をのこして、戸をしめる。
部屋は六畳で、豆電球がともるだけで薄暗く、安物の布団が敷かれている。
布団は青色で白い渦が多数巻いている、その渦を見ていたら急に胸がむか
むかしてきて吐き気がした。どうやらさっき飲んだビールが効いてきたもよう、な
んでこんな時に、暑く喉もかわいていたので油断したのだ。女どころじゃない、
吐きそうなのだ。我慢できない。嘔吐の波がくりかえし、いまにも胃から吹き上
げそうなのだ。
そこえ戸が開き、若い女がはいってきた。
「おまたせ、まってもうてごめんな」
と、女はまののびた口調で言う。
「便所、便所どこですか?吐きそうなんです。便所、便所をーー」
女も吃驚したが、それでもすぐに便所に案内してくれた。
どうにか間に合い、ゲーゲーと胃のなかのものをすべて吐き出してしまった。